超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【その事件は醜悪そのもの】沢木冬吾『愛こそすべて、と愚か者は言った」

明日も行くことになるでしょう。

いつも通りのことです。

やるだけですとも。

 

 

 

 

沢木冬吾『愛こそすべて、と愚か者は言った」

愛こそすべて、と愚か者は言った
沢木冬吾

KADOKAWA 2007年07月25日

by ヨメレバ

 

 

 

 

なぜ、元妻の事件に?

それはなぜか離婚したはずの元妻から

指定されたことでした。

 

誘拐事件の人質に取られたのは

元妻の間にもうけた息子、慶太でした。

 

そのために要求された身代金は1億。

それをかき集めなければ息子の命はないと。

 

その男…久瀬は

犯人たちの隙を突き

息子を奪還することに成功しますが…

 

その後にその現夫婦が姿を消すのです。

 

感想

かなり胸糞な作品になることは請け合いです。

だけれども不愉快にはならないところ

著者の文章力の強さを感じましたね。

 

結論から言ってしまえば、救われないです。

まったくではないものの、どこまでも救われないです。

 

この人質になってしまった慶太も

本当に悲しすぎるほどの子なんですよね。

 

それは最初は心を閉ざしていた慶太が

少しずつではありますが

久世や居候の姪である初美に心を打ち明けていくのです。

 

それはあまりにも、まだまだ子供の

彼にとってはあまりにも残酷なものでした。

感情に乏しくて、自己主張があまりにもないのは

そこに強い要因があったのです。

 

そして展開が進んでいき、

だんだんと一連の誘拐事件と

それに関わるおぞましい事実をつかみ始めてきたときに

久世は慶太とある約束をするのです。

 

これは覚えておくと、終盤の描写が

興味深く映ることでしょう。

 

それは決して褒められた方法ではありません。

だけれどもそれまでに慶太は

その小さな体で精一杯もがき苦しんだのです。

「いなければいい」という思いを抱きつつ。

 

これをこんな子供に言わせるぐらいですからね…

その真相を知ったらはっきり言って吐き気を

覚える代物だと思いますよ。

 

あとは久世の仇ともいえる人間かな。

この人もあまりにも悲しい人間だったな。

繰り返される表現が刺さるんだよ。

かわいそう…

 

結局彼は向けられる愛を

すべてはねのけてしまいました。

彼の周りには悲しきかな、暴力ばかりで

愛というものは微塵もなかったのです。

 

これはあいつらとは対照的な

愛なんかくそくらえ、の典型でしょうね。

結局イロはいてもそこに愛はありませんでした。

 

そして結末がな…

救いようがないんだよ…

 

人によっては嫌悪感をあらわにする作品だと思います。

私は拒否まではいかなかったけれども

みんながみんないろいろなものにまみれているな…と。

 

おわりに

最後の久瀬側の描写は

けっこう元も子もない部分もあるかも。

でもはっきり言ってその人は巻き添えだからね。

そう言って当然だとは思うね。

 

彼らに幸あれ。

それしか言えないわ。

 

 

おわり