超雑読と趣味と

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【最後の最後まで油断ならぬ】佐藤賢一『ハンニバル戦争』

明日は完全休養日だ。

もうどれぐらいぶりだろうね。

めったにない日程です。

 

 

 

 

佐藤賢一『ハンニバル戦争』

ハンニバル戦争
佐藤賢一

中央公論新社 2016年01月

by ヨメレバ

 

 

 

 

一筋縄ではいかない戦い

本当に読み応えのある作品だな、と思いました。

 

私は正直歴史小説系は不得手です。

スタイル上前知識を入れないで

読むケースも多いというのも

多少不得手の理由になるかもしれません。

 

でも一番の理由が

「学生時代あまり興味を持てなかったから」

だと思いますね。

正直暗記ありきの教科だったので。

 

この物語はスキピオという一人の人物を通して

描写される長きにわたり行われた

カルタゴ軍との戦争の物語です。

 

感想

本当に密だったなぁ…

様々な人の思惑もひしひしと伝わってくるし

戦争というものは一つしくれば最悪なぐらいに

バタバタと崩れていく…

 

その描写がすごいんだよねぇ…

はじめはカルタゴ軍が行ってくる攻撃に

まったく太刀打ちできず、敗走を重ねていく

哀れなローマ軍を見る羽目となります。

 

哀れ一方ではないんですよ

一応スキピオにも婚約という幸せな日々が

やってくることになるのですから。

 

ちなみに余談ですが、プロローグが

なかなかの破壊力を誇っています。

17歳のスキピオ少年オイタを盛大にやらかすというのが

ぴったりのプロローグですので。

 

そんな女性にはちょっとなスキピオですが

それに余りあるほどに頭脳明晰でした。

それと側近にも恵まれているんですよね。

 

実はさすがのスキピオも一度、

もはやローマというものを

心から見捨てたことがありました。

 

それに余りあるほどにローマ軍は殲滅させられ

何万もの兵を失うことになったのです。

 

その戦場はいかほどかはお判りでしょう。

その時に側近であったガイウスとも離れ離れに

なってしまいますので。

 

そんな絶望に打ちひしがれたスキピオを

正気に戻してくれたのは

このガイウスだったのです。

 

ああ、本当君は心底スキピオを信頼しているんだなと

この場面でジワっと来てしまいましたね。

 

そしてそのあと、スキピオはついに覚醒するのです。

覚醒するまでに身内も、義父も亡くしているのです。

何とかして憎きハンニバルを出し抜きたい…

 

その思いはある「発想の転換」にいたるんですよね。

そう、どうすればカルタゴ軍を出し抜けるか…

それは今までの戦いの中に隠されていたわけなのですから。

 

そのあとからはだんだんと風向きがローマの方へ

傾いていくのです。

 

究極の行動だったアフリカへの侵攻を経て、

ついぞあのハンニバルと相まみえることになるのです。

 

その結果はいかなるものになったのでしょうか…

 

おわりに

この本は割とスキピオの心情描写が

現代風に書かれているのでそういう書かれ方が苦手な人は

受け入れられない可能性があります。

そういう人は…この感想を見てもブラウザバックだからね。

 

最後の戦いとその後の書かれ方がもうよすぎて。

そうなんだよね、戦いが終わって過去の人になってしまえば

もはや栄光なんてね…

 

かのスキピオですら最後はいらん罪をおっかぶされて

失脚の憂き目を見ているのですから。

 

戦争はやっぱり犠牲が多すぎるんよ。

それはスキピオも思っているのよ。

その戦法のために流された血は、多すぎたよな。