明日から元に戻ります。
でももう涼しくなるんだね。
そろそろだっさいジャージの出番かな。
実さえ花さえ 講談社 2008年10月22日
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心に傷を負ったものたち
実はこの作品のほとんどの登場人物は
心に傷を負っています。
想い人がいたものの、
身分の違いからその想いを伝えられなかった者、
継母に疎ましがられ叔母に預けられたものの
叔母がなくなり天涯孤独になった者
父親に捨てられたも同然の少年。
そして…過去の過ちである
夫婦を心中まで追いやった男。
なかなかの傷を持っているでしょう。
だけれども彼らは一生懸命生きているのです。
そしてそのそばには「花」がありました。
感想
部隊はなずな屋、という育種の腕に定評のある男新次と
その妻であるおりんが営む植木屋です。
間違いのない仕事で定評があり
その仕事の巧みさは上総屋六兵衛が依頼した
桜草の仕事以来、目を見張るものがあります。
だけれども、この桜草の仕事、当初は
肝心の植木鉢が手に入らなくなったりと
困難の連続だったのです。
だけれども躍起になっていた新次をよそに
妻のおりんは思わぬ植える方法を
提供してくれるんですよね。
寒天を使った植え方。
無論冷まさなければなりませんが
ある程度冷めたうえで使えば
植木は長持ちもするのです。
おりんは決して花に関しては腕がいいとは言えませんが
花師の妻として本当に新次を支える
いい奥さんなんですよ。
どうすれば植木が持つかというノウハウを
かつてやっていた子供に学を教えるという
かつての仕事を生かして作り出しているのですから。
それがきっかけで植木鉢も何とか
手に入れられるという
ラッキーなことも引き寄せているんですよ。
何事も堅実って大事よね。
でもね、かつて新次が想っていた女性の家である
霧島屋に関しては想い人が夫にした男が
まーまーひどい極悪人でね。
霧島や本来凄腕のところなんだけれども
この夫、ロクなことしなかったの。
最悪ね、家を汚すような真似をした挙句に
想い人を抑圧するような行為に出たのよ。
実はこの汚すような真似に気づいていたのは
最初に仕事を提供してくれた六兵衛なんだ。
実は新次とこの不届きものが花の品評会的なところで
顔を合わせることになるのだけれども
狼藉を働いたこの男にとどめを刺してくれるのです。
実はこの女性(理世)もかなり霧島屋の中で
実母にひどい扱いをされていましたが
その後の新次が想い人に行った大仕事の結果
決意を固めたようにこの家から逃げ出すことに成功しています。
この気持ち、わかるんだ…その当時は女性は
活躍できない悲しい時代。
だからこそ彼女は別の地へと希望を求め去っていったのです。
この作品のキモは「おわりに」の部分で触れましょう。
ちょっと書きすぎたのでね。
おわりに
この作品にはほかにも、器量よしの子である雀という少年がいます。
はじめこそしたっ足らずで鼻水の子でしたが
だんだんと花に対する才覚を発揮することになります。
ちなみにこの作品の終わりにちゃんと出てきますのでお見逃しなく。
あとは遊び人だけど大切な人への思いは一途な辰之助も出てきます。
この作品の後半は辰之助と彼の祖父の六兵衛の話になります。
ある悲しい物語があるの…ここはしんみりと来るはずです。
運命って本当、残酷だなと強く感じました。
素敵な作品ってこう文字数も長くなるね。
(前の記事は本気出したからああなっただけ)
救われてほしかったけど、こっちのほうがやっぱり
突き刺さる点では間違いなかったと思うんだ。