超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【絶対神をも動かすしたたかな女】中村文則『王国』

筋肉痛になりました。

重いもの確かに長い時間持ったからね…

仕方ないといえば仕方ない。

 

 

 

 

中村文則『王国』

王国
中村文則

河出書房新社 2015年04月07日

by ヨメレバ

 

 

 

 

それは逃げられない業

その女性は、社会的要人の弱みを握る

女性を武器にした仕事をしていました。

 

無論それは、決して日が当たることのない

とてつもない闇の仕事です。

そしてそんな業にはむろん、闇の存在も

群がってくることとなります。

 

そんな中一人の男がその女性に

意味ありげな警告を残していきます。

「あいつには関わってはいけない」

 

しかしながらもう、手遅れだったのです。

 

感想

そう、もう要人を手にかけた時点で

運命は決しても同然だったのです。

つまりそれはあの絶対神、木崎の掌中に

堕ちてしまったことを意味するのです。

 

こちらの視点では掏摸の主人公とは違い

彼女は女性なのでまだ手加減があります。

あっちの場合は仕事をやり遂げても

アウトになってしまいましたからね。

 

駒として役に立たなくなった(?)

人間には本当容赦ないよな木崎は。

 

だけれども、本当は彼女…ユリカも

その運命をたどるはずだったのです。

 

この木崎から情報を盗み取るように

所属していた組織に言われたときに

はっきり言ってしまえば、「死」は確定といえました。

 

だけれども彼女は決してほぼほぼ確定の死に

甘んじることは決してしなかったのです。

彼女は罠であった難儀な要人を貶める任務も

巧みにやってのける凄腕の女性です。

 

なのでその罠にかける任務にはまったと

自覚して、命のカウントダウンが始まったとき

彼女はいかにして立ち回るかを決めていたわけです。

 

それは絶対神である木崎さえも

絶対に手玉に取って生き残ってやるという

並々ならぬ生への執着でした。

 

そのために双方に対する裏切りをも

平然とやってのけるのです。

情報攪乱という形で。

 

悪手ですよ、正直言ってしまえば。

かなり荒いフェイク情報を織り交ぜているので

組織のクモの巣のような情報網であれば

あっという間に看破されるでしょう。

闇の木崎のそれもね。

 

だけれども露呈しようが

彼女は彼女らしく、したたかであり続けました。

それがたとい、木崎に見つかるという

明らかな絞首台への道に進んででも、です。

 

それどころか彼まである種の女の武器の

毒牙にかけようとしたのです。

掏摸の主人公はそこまではできませんでしたね。

逃げに走りましたもの。

 

その結果は…

 

おわりに

別の主人公も完全悪ではありませんでしたが

ユリカも完全悪ではありませんでした。

かつて関係のあった女の子供の面倒を不器用でも見ていたから。

 

その先は想像の範疇でしょうが

彼女は殺されないとにらんでいます。

再び木崎が殺そうにもこの子、絶対巧みに逃げおおせますよ。

絶対神でもこの機転の利かせ方はかなわないもの。

 

でも謎の多い作品だな。

まああまり掘り返さないほうがいいとは思うな。

組織の人もそういっていたし。

 

知ることが必ずしも、ベストでないときもあるんよ。