超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【子供の闇と、大人の闇】藤沢呼宇「ぼくらは月夜に鬼と舞う」

明日は行き先多いからちょっとスケジュールが密。

人ごみの密は嫌よな。

このご時世も相まって。

 

 

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藤沢呼宇「ぼくらは月夜に鬼と舞う」

ぼくらは月夜に鬼と舞う
藤沢呼宇

岩崎書店 2003年04月 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 友が忽然と消えた…

この作品は非現実と現実が入り混じった、ちょっと不思議な世界。

主人公(野守完)はいわゆるお受験を控えている子です。

まあ作品を読んでいればわかる通りでおとなしくまるで「いい子」なんですよ。

 

そんな彼がある日いなくなってしまったモッチという友達を

探す物語です。

でもね、この作品は人が抱く闇をえらく描いているのよね。

 

感想

率直に言ってしまいますと、この作品は

読み終えたところで満足感を得られる作品ではないです。

課題、というものが残ると思います。

たとい一連のモッチの失踪事件が解決しても

主人公の抱えている問題はクリーンにはならないから。

 

彼の家庭は読んでいけばわかる通り、現代の毒親なんですよ。

彼をいい人間に育てようと必死になっている。

これって私もかつて経験したことがあるのですが、苦しいんですよ。

現実に完が鬼にさらわれたモッチを助けるために我が身を犠牲にしたときに

親御さんは見捨てるような描写を取ります。

 

もうこれって傷つきますからね。

はっきり汚い言葉で行ってしまえば、てめぇの道具じゃこちとらねーんだよ

と本当に言いたくなるぐらい。

 

ちなみに、この思いを抱いているのは完だけではないのです。

あまり明かしてしまいますと物語を全部紹介してしまうので

さわり程度にしますが完を途中、助けてくれる人間がいるのです。

 

実はその人間は冒頭の噂話とつながりがあります。

その人間もある種、完と同じような目に遭った人間です。

もっとも彼の場合は自ら逃げ出したのではありますが。

 

そしてモッチをさらっていってしまった鬼の正体は

終盤になると思わぬ展開を見せます。

そう、これはよく考えると人の闇、というのにつながるのです。

 

これも大人の闇ですね。

おそらく完の親御さんもこの鬼にだんだんと侵食されているのでは

ないかと思います。

ただ、度が過ぎてこうはならないもののね。

 

発想等は面白いけれども

なんだか読んでいて苦しくなる作品ではありましたね。

経験を嫌悪している、というのが私の根底に

あるからかもしれません。

 

 おわりに

あまりいい終わり方にはなりませんでしたね。

確かに展開はやや胸糞、といった具合なのですが

唯一の救いといえば、抗うことを覚えた完少年のことを

見捨てない友だちと、お姉さんがいることでしょうか。

 

友はたとえ塾に行かなくても

きちんと完のことを待ってくれていたので。

心のよりどころは1つじゃない、ということですね。