超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【嘘と、弱さ】道尾秀介『透明カメレオン』

明日も食べ過ぎ飲みすぎの分を燃やしてこようと思います。

新年もやるか、年始がどんな感じの人の動きをするのか

見てみたい気もするので。

 

 

 

 

道尾秀介『透明カメレオン』

透明カメレオン
道尾秀介

KADOKAWA 2015年01月30日

by ヨメレバ

 

 

 

 

魅力的な声を持つ、男

その男のラジオは数多くのリスナーを引き付けていました。

なぜかって?彼はそれに値する魅力的な声を持っていたから。

 

しかしながら現実はDT(!)かつ決して風貌はさえません。

なのでリアルな彼を見た人間はがっかりしてしまうのです。

それは彼が昔から悩まされていたことでした。

 

彼には拠り所にする場所がありました。

その場所には、仲間たちがいました。

そんな時、彼を知る謎の女性がやってきて…

 

感想

人には弱さというものがあります。

そして心に落とす闇というものも。

おそらくそれは、貧富関係ないと思うのです。

 

今回、主人公である桐畑恭太郎は三梶恵という女性と出会い、

嫌が応もなく拠り所にする場所である「if」の面々とともに

嘘から始まったとんでもない事件へと巻き込まれるのです。

 

その三梶恵のついた嘘は、かなりハードなものです。

一応、人の生き死にが関わってくるのですから。

ただし、嘘をついた理由というのが本当に悲しくなってくるのです。

 

大切にしていた人が、おかしくなってしまって

何とかしてもそれを止めたかったのと

大切な人を助けたかったということ。

 

その大切な人を傷つけた黒幕は

ifの仲間たちの前に後半に姿を現します。

間違いなくこいつらのやったことは悪いことです。

現実に私の住んでいた県でも数年前にレジャー施設跡地に

この問題をやらかした奴がいます。

 

ちなみに大切な人…三梶恵の父親は

実は関係者にいいように使われたんですよね。

親子ともども。

 

必ずこういうことをする悪はいるけれども

こういう意地汚い奴は本当にむかつくものですよ。

だけれども恭太郎は彼女にかかわるうちに

その怪しさには気付いていたみたいです。

 

ちなみにですが…

今回出てくる仲間たちもみんな、

それぞれ嘘を抱えており、

とてつもない傷も抱えているんですよね。

 

中には実質罪には問えないことだけれども

結果的には人殺しになってしまう結果を

招いてしまった人もいるのです。

 

ちなみにそのエピソードは恭太郎のラジオで

出てきますが…嘘が紛れているんですよ。

それが終盤に種明かしのごとく出てくるのです。

 

主人公の嘘は…一番その中でもハード。

どんなにそれを望んでも絶対にかなえられないのです。

これは彼の罪ではないんですよね。

運命がこうしてしまった…だからこそ一番つらいのです。

 

おわりに

この作品は、心に闇を持った人たちが

集まっているけれども、みんなとっても優しい人たちなんですよね。

恭太郎が恵のついている嘘に気づき、危険が迫っているときに

真っ先に助けてくれたし、絶体絶命のピンチの時も見捨てなかった…

 

人は、弱いもの。時にクズになってしまうこともある。

でも、その心に寄り添う人、何かがある限り

まだ生きていいと思えるんだよね。

 

おわり