超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【狂気、そしてまた狂気。さらに狂気】折原一「倒錯の死角」

晴れの天気を拝むことができたのはうれしいものです。

ただ、今年、あまり気温が上がっていない気が…?

 

 

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折原一「倒錯の死角」

倒錯の死
折原一

東京創元社 1988年10月01日 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 読めば読むほど、キショクワルイ。

あえてカタカナで表現してみたいぐらいに気味が悪い作品です。

人は時に人が思うほどに狂う場合があります。

と、言うかこの作品の場合は執着心、といったところでしょうか。

後半からは様々な狂気が集まってうわー…となります。

 

感想

先ほど述べた通りでとにかく、とにかく気分が悪くなる作品です。

まず、主人物として出てくる翻訳家(?)の大沢芳男の環境というのが

まずもって狂っていやがるのですよ。

 

彼はやけに偏屈な叔母と同居しているのです。

とにかく偏屈の塊でとかく芳男を束縛したがるのです。

彼にとってはそれは鬱屈以外の何物ではありません。

 

それを満たすために、彼はある変態的な趣味を持つこととなります。

それが「のぞき」そしてとんでもない行為(これは中盤から判明)が

出てくるのです。

 

それと同時にアルコールが彼の体を蝕んでおり

だんだんと彼そのものが崩壊していくわけです。

 

事件のメインはその「のぞき」趣味から浮かび上がってくる

ある殺人事件です。

それは201号室で起きた事件…のはずなのですが

その真相部分は手記からはいまいち浮かび上がってこず

終盤の真相判明まで待つこととなります。

 

また、登場人物の一人にはこの主人公をよく思わない

同じくアルコールにむしばまれた曽根という男が出てきます。

彼はアルコール依存症の治療施設である罪をとがめられたがために

大沢に恨みを抱いているのです。

 

曽根は大沢が持っている弱みを握って

なんとしてでも追いつめようとしたのですが…

 

いわゆるこの作品はサスペンス系のもので

こちら側がなぞ解きをする要素はほとんど用意されていません。

 

しかしながらこの本のあとがきにある通りで

いくつかの部分に不自然な記述がみられ、

それを読み取れるかがこの物語の真相を解くカギでもあるのです。

(一見すると平穏そうに見える部分もよく見るとおかしいんですよね…)

 

で、これで終わりだろう、なんて思うともう何撃も来るんですよ。

著者さんや、あなたは何発銃弾を持ち合わせているんだね、というぐらいに。

 

ただし、その最後に差し掛かる部分はいわゆるフェアなものとしては

扱いづらいものとなっているため

この作品がいいか?ということは人によってすごく意見が分かれるのでは?

と思っております。

 

 おわりに

サスペンス系は嫌いではないんですよね。

ただ、この系統、すかっとしないものが非常に多いんですよ。

まあ、このジャンルにスッキリを求めちゃいけないんですけどね。

 

どうやら一部人物がほかの作品に関係するようで。

また著者の作品に出会う時が来たら、確かめられるかしら。

 

END