超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【ただただ、狂気があるのみ】フィリップ・バラン「趣味の時間」

暑い日が続いております。

まあ、今までが涼しすぎたのですよ。

さすがにこの部屋は暑いのでエアコン稼働ですけど…

 

 

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趣味の問題
フィリップ・バラン

早川書房 2000年11月15日 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 なんてことをしてしまったのでしょう…!!

本当にこう思ってしまいます。

人というものは時に強く、時にもろいものなのですが

そのもろさが終盤に如実に表現されています。

 

まあ、もっともなところそうなってしまったのは

この作品の根幹をなす「ある異常な行為」の結果なのですが

それに耽溺しすぎたがゆえに、破滅を迎えてしまうのです。

 

感想。

背筋がぞっとする作品、いやな気分になる作品というものに

まま出遭うことがあります。

それもその本の醸し出すスタイルなので否定はしませんけどね。

ただし、あんまりな作家さんもいるのもまた、事実です。

幸いこのブログでは出ていません。再読の際は一応表現はオブラートに包みますが…

 

この作品はぞっとさせられるし、不快にもなります。

なぜならば、ある「異常な行為」を提案した人物そのものが

いわゆる富豪で、ありとあらゆるものを手に入れているのです。

だけれども、一人の男を「試食係」として任命してからは

だんだんとその行動には狂気があふれるようになります。

 

試食係、と聞くと食事だけとお思いになる方も多いでしょう。

しかしながら、そうではないんですよね。

中盤にかけてはかつて家族を築いていた女性の所へと試食係(意味深)である

二コラを向かわせていろいろと調査をさせるのです。

 

そしてもっともっと怖いのはこの試食係である二コラに対する

恐ろしいまでの執着心。

最初は試食係で済んでいたものの

やがて彼に一心同体、いや経験の共有までも求めるようになるのです。

そのためには彼のあらゆるものを奪ういわゆる拷問に近いものも。

 

もうさ、イカレテルでしょ?

無論、試食係は最終的に富豪であるフレデリックを見離すことになります。

 

そりゃあそうでしょう。

どんなに物事を同じくしようとしても、生きている時間が違うわけなのです。

どうかなんて不可能ですしね。

 

そして、すべてが破綻した後の描写…は

耽美な時間が破綻したので、それはわびしいものとなります。

でも、それに気づけなかったフレデリックも問題なのですよ。

何も考えないときって、楽なんですよね。

そして人を使役できるのって、楽。

 

でもその楽はやがて、自らを刃で貫くのですよ。

そのツケを払っている人を、知っておりますので。

 

 おわりに

とてつもない作品でしたねー…

おそらく共依存の関係はこういうことなのでしょうね。

もっとも、この作品のように極端ではないにしても

結局のところ禁断の関係を築いてしまった時点で

もう後戻りはできなかったんだと思いますよ。