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【あなたは著者に、だまされる】西尾維新「掟上今日子の家計簿」

風の強い日と相成りました。

明日は風がないけれども、寒い。

すっかり冬になりましたな。

 

 

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西尾維新「掟上今日子の家計簿」

掟上今日子の家計簿
西尾 維新

講談社 2016年08月23日

by ヨメレバ

 

 

 

 

先入観を抱くと…

眠れば記憶の消えてしまう探偵、忘却探偵。

そんな彼女の元には「なぜか」警察から

事件調査の依頼が舞い込んできます。

今回現れるは4つの事件。

そして4人の男性警察官…

 

それぞれの物語が始まるのです。

 

感想

先入観と意外性。

それが目に付く作品でありました。

 

今回冒頭に眠ると記憶が消えてしまう、と書きましたが

久しぶりにその記憶が消えてしまう特性を

利用する事件が出てきます。

いわゆる倒叙系の事件の時にです。

 

実はこの事件は真相部分に特殊性のあるものです。

実際に確認する場合にはあるもの(しかも厳格な指定)が必要とされます。

犯人指定も少々特殊。

 

そう思うと真相は調べられないの?とお思いになるでしょう。

 

でもちゃあんと著者は温情を用意しています。

なぜならば、該当するケースは1例のみのため。

 

あとこれは見事な読者側の操作があると思わせたのは

3作品目の作品ですね。

これは誰しもが思い込みがちな状態になります。

まさか、それはないだろう、と思えるような

ケースが出てくるのです。

 

しかも恐ろしいことに、完全な密室犯罪です。

しかも被害者側に完全な日がありそうな状況。

 

でも…これがもしも、われわれが想定しているような

イメージとは違ったとき、事件はまた

違ったものへと変貌してきます。

 

今日子さんはこの事件の真相に触れる際

えげつない、という言葉を残しています。

いや、本当にえげつないんですよ。

もうね、鬼の所業だろこれ、と。

 

その意味はぜひこの作品を読んで確かめていただければ

と思います。

 

この事件は、案内役の警察官が

とことんまで今日子さんに嫌われます。

なぜかといえば、えげつないの言葉にも関係することなのです。

彼も仕事なのではありますが彼女にそういわれてもまあ、

仕方のないことだと思いますね。

 

最後の作品は今日子さんの特性を知らしめる作品でしたね。

彼女は記憶が失われてしまうので

スマートフォンを使いこなすことが不可能なのです。

つまり記憶がリセットされるたびにその操作を学ばねばならないということ。

 

つまり…それってこうなった状況がスマホ世代になる前ということを

示唆するんですよね…

 

これも言葉どおりが通用しない事件です。

固定概念でいると足元をすくわれるパターン。

 

おわりに

今回は男性警察官バージョンでしたね。

3人目と4人目の警察官は損な役回りでしたね。

3人目はとことんまで嫌われ、

4人目は叱られるというね…

 

3つ目の事件がとにかく見事。

先入観をあえて抱かせ、後半に崩す手法。

狭い視点になったところにジャブでしたわ。

 

まだまだ、シリーズは続きます。