超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【負の歴史は何度でも繰り返される】吉田修一『愛に乱暴』

風が強いので命の点を考慮して待機。

さすがに危険を冒してまで

出るわけにはまいりませぬ。

 

 

 

 

愛に乱暴
吉田修一

新潮社 2013年05月

by ヨメレバ

 

 

 

 

だんだんと感じる違和感

読み進めていくうちに感じていくことでしょうね。

最初はある夫婦の夫側の不貞相手の日記の描写に

感じられることでしょう。

 

ところがね…ある言葉を目にしたときに

きっと気付くと思われます。

 

あれ、その直前に何してたっけ?

え、これって…

 

この作品は、ある種一発ネタ的な

作品です。

それのための作品かも…

 

感想

これやるがために書いたでしょう…

そう強く感じた作品でした。

そういうわけですので、この夫婦もまた、

いわゆる略奪婚で結婚した夫婦なのです。

 

そしてまた夫側が新たな女を

こさえた挙句に妊娠までさせたという

歴史はまあまあ繰り返すんだなという

典型例の作品となっております。

 

しかも歴史は繰り返すは

これだけではないんですよね。

 

実はこの夫(真守)の祖父もまた

同じようなことをしでかしていました。

 

彼の父親はその婚外子だったわけです。

つまり本妻とは子供ができなかったということ。

もうすべからく狂気しかねぇ家だな。

 

そして、実は離れにその妾が

住んでいたんですよね。

やっぱり狂気だダメだこれ。

 

そしておそらくその妾であった

時枝という女性も同じく

今回の主人公の桃子と同じように

心が壊れていたに違いないのです。

 

まあこれを現実視点で言ってしまえば

因果応報、それでおしまいでしょう。

 

でもこの悲しき糸に絡み取られた

当事者たちはその心のやりどころは

ないも同然なんですよね。

 

それがかつて起きた義理の家族の家の周辺で起きた

不審火事件だったんだと思います。

 

一応その事件は未解決でしたが

恐らくその時枝がやったかも、でしょうね。

 

そして現在の時系列でも

立場はちがえども、かつて愛人の立場で

今は本妻となった桃子がその狂気を

体にまとわせることになります。

 

床下に秘密の場所を作ってまでに…

 

狂気の描写がこの作品は

実にこれはひどいと思うとともに

もっとやってやれと思うんですよね。

 

真守の不貞相手に突撃してみたり

彼女に子供をあきらめるように

かなり強く迫ったり…

 

実は桃子にはその一発ネタの通りで

ある悲しい出来事に見舞われているのです。

もうその時点で実質マイナスからのスタートですし

こうなるのも必然だったのでしょうね。

 

ま、そういう視点で見てしまうと

真守の家はとことんまでにクズ、ということに

なってしまうということで。

 

まあまずそうなった時点で関係性を切れば

こうはならなかったのよ。

フィクションにifは通用せんだろうけどね。

 

おわりに

何かと鬱々とする作品ですが、

実は猫と、誠実な海外の青年だけは

彼女の心のよりどころだったのです。

 

まあ言えることはイレギュラーなことは

よほどメンタルが強くない限り無理というわけさ。

この2人も義家族もそんなメンタルなんか

はたからなかったというわけよ。

 

出オチ作品じゃないか。

ぜってぇ1発ネタのための作品じゃ。