超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【隅から隅まで狂気】柳美里『フルハウス』

雨の日がチラホラと。

休めるかな…

不摂生してないので体管理できる自信はある。

 

 

 

 

柳美里『フルハウス』

フルハウス
柳美里

文藝春秋 1999年05月07日

by ヨメレバ

 

 

 

 

集結、狂気。

ここまで狂気が煮詰まっている作品、

そうそうないと思っているのですが…

 

そう思うぐらいにいろいろとひどい本です。

フィクションだからこそ許される本ですが

それでもこのグサグサと突き刺さってくる狂気には

正直辟易としてしまいましたね。

 

表題作からもう狂気1000%といっても

過言ではないでしょう。

狂った父が建てた家が巻き起こす

とんだ、いや超絶迷惑な騒動。

 

感想

いやはや、これはひどい、実にひどいですぜ!!

表題作と別の作品も含め

そこには救いようのない狂気しかないの。

救いは一切ないのさ。

 

表題作は

自由気ままに欲のままに動く父親が

大きな家を建てたお話。

ん、フツーじゃん?そう思ったでしょ。

 

んなわけないない、これだけ前フリの時点で

えらいこっちゃな紹介をしているのだから

そりゃあえらいこっちゃなことを招いてくれるんだわ。

 

まあ察しの通りだけどこの父親と

第三者的立場な主人公とその妹は仲が悪いです。

そして家族環境も想像できる範囲でも

決して良いとは言えないでしょう。

 

何せこの姉妹は疵持つもので

かつて理由は分かりかねますが

かなり悪質な万引きをした過去があるのです。

(盗るスケールが万引きにしてはでかい)

 

まあ、それは思うようにいかない自分たちを

正当化したかったのでしょうね。

いわゆる毒家族だったのでしょう。

だからこそ二人は離れたのです。

 

だけれども親はそうではなくて

その家を持って再び関係性を戻そうと(?)したようで。

いや、今更感しかないからな。

 

そしてそれがうまくいかなかったためか

いつの間にかどこかから救い出した(?)ホームレスだった

家族まで呼び入れて…

まあその後の展開はお察しです。

 

その大事件は心に疵を持つ主人公の

「何か」を呼び起こしてしまったようですね。

終わり際が狂気の極みです。

 

恐らく登場人物の一人に

「昔の自分」を見たのでしょう。

彼女はあるものの被害者でしたしね…

 

でも超絶胸糞よ、これ。

 

もう一つの作品は終わりの部分で少し触れましょう。

こっちのほうがクルッテル度合いではかなり上ですけどね。

 

おわりに

もう一つの作品はサレ妻の狂気の作品です。

主人公はシタ側。

ある日サレ妻の狂気の電話を受け取ったことから

すべてが狂い始めるのですよ。

 

裏切りという行為はある体に傷を持つ

サレ妻さんをとことん壊したのだと思います。

離婚の選択肢さえとっていれば「妄想の事実」まで

作ることも、狂気にまみれることも無かったろうにね。

 

ただ、この作品はシタ側の主人公に

きちんと罰が当たっています。

なぜそこでお見合い相手に電話かけられたんだよ…

あさましいことよ…

 

こういうの苦手な人は回れ右ね。

フィクションだからこそ面白いけど、

それ抜きにしてもさすがにえげつない作品だわ。