超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【生き物の美しさと人の醜さ】ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』

明日は行くことはかなわないでしょう。

だけれどもいいのです。

 

 

 

 

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』

ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ

早川書房 2020年03月05日

by ヨメレバ

 

 

 

 

人の悪意は醜いものよ

人の理由なき悪意というものが

いかに残酷で恐ろしいものを生み出すかが

よくわかる作品でしょう。

 

ただしこの本の魅力は悪意だけではなく

その退避として束の間の主人公にとっての

幸せな時間には多くの生き物が関わっているということ。

 

仲間のいない彼女にとっては

差別の目を向けない生き物こそ

心の友だったわけなのです。

 

しかし悪意は平和な日々を送る

彼女に牙をむき、

無実の罪を仕立て上げたのです。

 

感想

私が普段の時間の禁を破って記事を書く本は

大体において衝撃的な内容で

明日まで残してはおきたくないというものです。

 

たまにどえらい本(誰かは聞かない)に

当たってしまう場合もありますが、

おおむねすごいと思う本です。

 

すごい!!と思える本に当たりましたね。

ただし、その分、人の悪意の描写は

実に醜く、文章であろうと

グサグサとわが身に突き刺さってくるものがありました。

 

彼女はちょっと特殊な場所で生活をしていたがために

周辺の住人から疎まれ

交流さえも避けられていました。

 

それゆえ父からも実質見捨てられた

カイアは、一人でなんとか生き抜くしかなかったのです。

 

だけれども彼女には生き物に対する

あくなき学習欲がありました。

 

それは数少ない彼女を偏見の目で見ない

ものであるテイトによってより強められたのです。

 

その結果は彼女の収集したものの

成果が認められて本まで出すように

なったわけで…

 

だけれども、それでも人の悪意は

変わらず、その地域の有力者の男の不審死により

かつて交際していたカイアは真っ先に疑われ

逮捕されてしまうのです。

 

無論前後の文を見ればわかる通り

明らかに彼女は関わっていません。

それなのに関わらず悪意は暴走するのです。

 

それは法廷でもいかんなく発揮されます。

公正の立場を揺るがすであろうとして

人の変更を申し出たものの拒否されるのです。

 

その後は本当にひどいもんでしたよ。

何をカイアの一家はしたというの。

ただ運悪く恐慌に見舞われて

すってんてんになっただけというのにさ。

 

でも、そんな愚者たちには

きちんと鉄槌が下されるんですよ。

 

そう、実はカイアについた弁護士も

同じ地域の出身だったのです。

だけれども彼はそれには与しませんでした。

 

この言葉の部分は必読ですよ。

~だからというレッテルが、いかに

人を盲目にさせるかということにね。

 

…だからこそ私はある種の見た目を

わざとしているのではあるのですが…

 

おわりに

実を言えばこの時代は差別が容易になされる

恰好の土壌だったのです。

 

法廷の席に人種の席のそれの表現。

これ本当にあったんですよ。

あとお店もそういうの専用のところがあったという

信じられないでしょ?

それが当たり前というクレイジーにも

ほどがあるだろという時代があったの。

 

でも今もあるよね?

あまり信ぴょう性のないニュースソースのあれ。

この時代でもあるんだよ。

 

人って何かをけなさないと生きていけないのかな?

それって一番悲しい時間の消費だと思うよ。