超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【少女の死は、不都合な事実を露呈させた…】西村京太郎「汚染海域」

今日は安全面の都合上、有酸素はなし。

代用で15分ステッパー。

明日は天気の面からしても行けるでしょう。

 

 

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汚染海域新装版
西村京太郎

徳間書店 2007年05月

by ヨメレバ

 

 

 

 

一人の少女の死が、明らかにしたもの

この本は、とても心の重くなる本でしょう。

なぜならば、世の中に渦巻く不条理がガツンと描かれているから。

 

人というのは非常に弱い生き物です。

権力というものの前には、簡単にひざまずいてしまうのです。

現実に本中に出てくる巨大コンツェルンは

そういう人たちにつけいり、とことんまでに事実から住民を

遠ざけてしまおうとしますから。

 

だけれども…

 

感想

この本は読んでいる途中から、とても気持ちの重くなる本でした…

基本的に淡々と読める我が強みを持っていますが

こういう権力がすべてを牛耳り、

住民たちを取り込んでいく描写は読んでいて

非常に憤りを覚えるんですよね。

 

少女は一人の弁護士に助けを求めていました。

中原という男に、です。

だけれども彼は彼女を助けることはできませんでした。

それに自責の念を覚えた男は

彼女の地元へと赴きます。

 

彼が気付いたことは、明らかに目の前に見える光景は

明確に公害とつながりのあるものなのに関わらず

誰一人それに異を唱えないのです。

 

そりゃあそうでしょうよ。

その地は太陽コンツェルンという巨大組織の息がかかり

彼らに異を唱えることをよしとしない空気が流れていたのですから。

 

そして形ばかりの調査団が中原たちの働きかけで

動いたものの、その調査団の一人が何者かによって

殺されてしまうのです。

 

その犯人の矢面に立たされたのは、

コンツェルンの進出による公害を上げる

一人の教師でした。

 

…もうね、読んでいるうちに心が重くなるでしょ?

この巨大組織は本当に手ごわくて

警察もその息がどうもかかっているらしく

高校生たちのデモ活動でもなかなか彼を釈放はしなかったんですよ。

(一応真犯人は上がっています。でも…)

 

それとすべての事件が露呈しても、このコンツェルンはとことん抗い

最後まで住民を惑わそうとしてくるのです。

住民を手なずけるのに手っ取り早い手段、カネを使ったわけですね。

彼らにとって二億なんぞはした金ですもの。

 

ただし、それすらも破綻がやってくるんですよね。

そうなるであろう記述はすでに学生のデモ活動で

示唆されているも同然なんですけれどもね。

 

確かに、一人で巨大組織に立ち向かってもどだい勝てやしない。

でも、もしも数が集まり一番被害を被っている人たちが

一斉に敵に回ったら…?

 

どうなるかはお分かりですね。

 

おわりに

この本は新装版で元々は1997年の作品です。

この時代ならばまだSNSという武器はない時代ですね。

なので最大の武器は数(アナログ)ですね。

 

ただ今は数(ディジタル)となっているので

数ということは変わりないでしょう。

ただし、今はその数も意図的に悪用されかねません。

なのでこの手段も確実性は落ちているのかもしれませんね。

 

でも不都合な事実は隠されるべきじゃないです。

それによって傷つき、悲しむ人がいるのならば

なおさらです。