超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【深淵に生きる者たち】中村文則「掏摸」

純粋な休みってないんだな。

別にそれは苦にしないけど

たまにはほしいと思うことは、ある。

 

 

 

 

中村文則「掏摸」

掏摸
中村文則

河出書房新社 2013年04月09日

by ヨメレバ

 

 

 

 

男は、凄腕のスリだった

彼には巧みに財布を奪い取るという

稀代の才能を持っていました。

 

かつて彼には仲間がいたのですが

ある種のものに関わりすぎたがゆえに

その仲間は消えてしまいます。

 

その時に言われていたのです。

「東京には戻るな」と。

しかし、彼は戻ってきてしまいました。

 

感想

何だろうね…このずっと暗闇をさまよい続けるような

イヤーな読書感覚というのは。

 

ページ数は実は200ページもないんだよね。

だけれども濃さという観点では強烈に尽きるのですよ。

 

まず主人公が犯罪者だし、関わる人間も自由業の方や

よろしくない方面で何かしらをやらかしている人ばかり。

 

主人公が関わった大仕事が

まさにそのよろしくない方面にいた男から

カネと「よろしくないなんらか」を持っていくことだったのよ。

 

そのよろしくないものは結局本中では

明確化されていないけれども「醜聞」とか「いけないお金」の

在り処等関係ではないかとにらんでいます。

 

で、彼はそんなものと関係してしまっているから

もうフラグはすでに立ってしまったがも同然ですよね。

 

そう、東京に戻ってしまって

なおかつ彼の良心の結果生み出した温情のために

彼はかつて関わったやくざである木崎に

仕事を依頼されることとなります。

 

だけどそういうお仕事は結局は駒に過ぎないということ。

結局主人公にはどんなに仕事に忠実でも

逃れえることのできない「ご想像通りの最悪の結末」

が待ち受けいるわけなんですよ…

 

まあこれに関しては、彼そのもののせいではなく

善人だったけど、犯罪としては最悪な振る舞いをした

パートナーだった石川も悪いとは思うの。

 

だからこれは救いがないなとは思ったね。

まあ、この雰囲気を醸し出している作品で

それを言ってしまうのは野暮だとは思うけれどもさ。

 

おわりに

これは純然たるフィクション作品の視点で

読まないとだめだと思う。

犯罪絡みだからね…

 

現実面を提示する感想は野暮だなと思いました。

そういうのを論じるものではないな、と。

確かに暗いし、グロいし、ゲスい。

 

でも世の中にはそのどす黒いほどの深淵でないと

生きられない人もいるんよ。

まあ私も、その部分に足を突っ込んでいるとは思うんだ。

このなりだからな…