超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【豊かさは何を奪っていった?】森まゆみ『抱きしめる、東京』

 

一気に週間予報真っ青になってた。

かいくぐれる日がない場合は枯渇の危機だな。

ま、その事実は甘んじて受けるさ。

 

 

 

 

森まゆみ『抱きしめる、東京』

抱きしめる、東京
森まゆみ

ポプラ社 2015年01月02日

by ヨメレバ

 

 

 

 

時代の流れは残酷

時代は流れていくものです。

そしてそれに伴って、失われたものも

数多くあります。

 

高度経済成長期を経て

確かに私たちの身の回りは豊かに

便利になりました。

 

それはまごうことなき事実でしょう。

だけれども、失ったものもまたありました。

 

「人とのつながり」

ン?あるよと思うでしょう。

それはね、時として虚になるんだよ…

 

感想

著者はほぼ私の近しい人と同年代です。

そして、青春をしていた時期の行動も

文学の部分を除けばほぼ近しい人と同じような

ことをしております。

 

今ほどに便利ではなかったからこそ

限られた時をこの時代の人たちは

謳歌していたのかもしれません。

 

現実著者はもうびっくりするほどに

本や映画にまっしぐらだったんですから。

時に映画に熱中しすぎて感情移入が過ぎ

家の玄関でもなく有様に…

(感情豊かな時期って素敵だな!!)

 

やがて時代は進み、大学に通うようになると

彼女は住み慣れた谷根千からいったんは去っていきます。

 

またこの時代も彼女はたくましいなと思ったのよ。

通っていた大学(早稲田)は政経学部ではそりゃあ

ムサいのは分かりきったことで。

 

そんな中でもまっすぐに彼女は

突き進んでいってるのよね。

同じ女子の中には恋愛とかに挫折して

つぶれちゃった子もいたみたいだけど…

 

そして結婚して子供ができ、

またこの地に戻って…

時代は地域の密着をだんだんと求めなく

なっていったのです。

 

私の住む地域はこの本ほどではないけれども

まだこういうところが残っています。

一応ある種の場所指定だけど

私は都会だとは思ってないから。

 

でもそんな住んでいる地域だって今はアパートとか出てるし

近くにその地域のそこそこの知名度のスーパーもできてる。

人も近くに大学あるし、利便性高いから

若い子も増えてるのよね。

 

でも、そこには何の関係の線はないのよね。

まあ確かにそれが現代では普通。

わたしもそう思ってるの。

 

だけれどもこれって、

人格形成面けっこう影響出るよ?

 

そう思うと現代の子は

人との関係性がある種ライトだから

SNSでも向こうに人がいて、

傷つくのが完全には理解できんのやろうなと

つくづく感じるのよ。

 

多分著者が憂いているのは

そういう面なんだろうね。

 

この本柱にそれが失われる残酷な描写があります。

私はその関係に近いものに関わっていたからこそ

その関係の暗部は大嫌い。

 

だけれども、それに関わっていた悪党が

かなりひどい最期を迎えた記述を見

胸のすく思いをしました。

 

人を足蹴にするもんじゃないよな…

 

おわりに

残酷な描写に少し触れますね。

それは地上げです。

それによって理不尽にその地を

後にせざるを得なくなった人がいたわけで。

 

それと彼らの人の良さにつけ込み

いい思いをさせて…というのも

これは聞いたことのある話ですね。

 

けれどもそこに「人の心の調和」が先に見えますか?

無理に立ち退かせたんだから、ある訳ないじゃん。

 

そのツケをある種今の私たちは

払わされているのかもよ?