超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【一人の少女が生み出したもの】ポール・フライシュマン『種をまく人』

願いが届けばいいのにな。

そのもやもやがすっかり晴れてしまえばいいのに。

 

 

 

 

ポール・フライシュマン『種をまく人』

種をまく人
ポール・フライシュマン

あすなろ書房 1998年07月01日

by ヨメレバ

 

 

 

 

荒れ果てた場所に生まれたもの

ここはクリーヴランド。

この場所は人の移り変わりが多く

様々な人種の住む場所。

 

そういう場所なためなのか

空き地には不法投棄が相次ぎ

ゴミまみれになっていました。

 

そんな中、父親を亡くした少女が

記憶のない父親を求め

一つの行動を起こしたのです。

 

それが様々なことを生み出すのです。

 

感想

この場所はその縮図でもあるのですが

この世界には様々な文化があり

様々な人種があり

様々な事情がありこの地に住むのです。

 

きっかけは一人の少女が

姿を知らぬ父親を求めるために

行った「種まき」

 

やがてその少女を見て不思議に思った女性が

その場所を掘り起こしてみたことから

すべては変わっていくのです。

 

植えたものは本来ならばその時期には

植えても効果はないものだったのです。

 

だけれども少女が思いを込めて植えたもの。

なんとかして助けてあげるため

他の人が立ち上がるのです。

 

やがてそこは様々な人たちが出入りする

畑となっていくのです。

 

時に、それをよく思わない人の妨害があったり

大切にしていた作物を盗まれてしまうことがあります。

 

それは一人のイキっていた青年のお話。

イキがりすぎて彼女にフラれた青年は

かつてケンカにすべてを見出していました。

 

だけれども変わるために彼はケンカをやめ

彼女の大好きだったトマトを植え始めるのです。

だけれども盗まれてしまうという。

 

そこでその農園周辺で寝ている少年を

呼び寄せるのです。

 

彼もまた、家に居場所を見出すことのできない

悲しみを抱えた少年でした。

 

彼は最初ここの常連さんから避けられていましたが

手先が器用という特性を持ち、

決してダメな子ではないことがわかってきたのです。

 

最後の方ではその彼、ロイスは差別の目でなく

一人のロイスという人物として受け入れられたのです。

 

あとは強盗事件によって

人に対する恐怖を覚えてしまった一人の女性も

印象的でしたね。

 

まだまだ人とかかわるのは怖い彼女。

だけれども農場でどうすれば水を得られるかの時に

ある案が採用されたのを知り

こっそりと必要な道具を差し入れたのは彼女でした。

 

こういう形でこの農園は安らぎを与えてくれるのです。

それは時に、何の感情もなくなってしまった

死を待つばかりの女性に、命の息吹を取り戻してくれたように。

 

おわりに

暖かいな…そう思わせてくれる作品でした。

そして整うことが人を穏やかにしてくれるということ。

 

現実それは最近カオスの極みを

片づけたからわかります。

もう少しだけ小手入れは必要ですが

前のような荒廃はもうありません。

 

落ち着いた時間と

落ち着いた行動ができています。

こういうところなんだろうね。

 

短い作品です。

でも、いい作品なんです。

 

 

おしまい