超雑読と趣味と

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【その代償からは…】カート・ヴォネガット・ジュニア『母なる夜』

明日から元の生活に戻ります。

ほぼカオスなルームは整頓終了。

こまごましたものを移動する程度ですね。

 

 

 

 

カート・ヴォネガット・ジュニア『母なる夜』

母なる夜
カート・ヴォネガット・ジュニア

早川書房 1987年01月

by ヨメレバ

 

 

 

 

一人の身を隠すもの

彼は戦中、あるとんでもないところに属していました。

無論その属しているものは現在でも

その忌々しい事実から忌避されているものです。

 

そんな彼は運よく処刑の手から滑り落ち

ニューヨークへ逃れることに成功します。

 

そして突如として

亡くなったはずであるオルガと再会が

かなったのではありますが…

 

感想

すごく文章的には

悲観的に書かれてはいないけど

内容としてはとてつもないものとなっています。

 

正義を振りかざすつもりはありませんが

この人に関してはある種の運が作用して

絞首刑という屈辱から逃れているのです。

 

しかもこの人、恐ろしいことに逃亡先で

一切身分隠してないのよね。

本名ダダ漏れにしてるの。

 

何を意図するかはわかりかねるけれども

当人は罪の意識はなかったんだろうね。

 

ただしさすがの彼も両親の死には

その立場上対面することはかなわなく、

妻だったヘルガの父親の死の真相も

だいぶ後に知ることになるのです。

 

しかもこの作品は後半の方に

かなり強烈な事実が出てくることになっていて

その瞬間に彼の運命は決定づけられたも

同然なんですよね。

 

もうすでにこの時系列の時点で

彼の身元は完全に割れており

現実に理不尽(一方的だけど理由あり)な仕打ちを受け

ボコボコにされていますし、

世間は彼を捕まえて晒し者にしようと

躍起になっています。

 

そしてそこから逃れられる希望が…の時に

この恐ろしいまでの事実が出てくるのです。

 

それだけでなくて彼にとっては

最強クラスの屈辱が待っているのです。

 

実は彼はある作品を大事にしていたのですが

それを汚されたも同然な状態に

なってしまっているわけで。

 

もうこの時点で彼、ハワードの運命は

実質決したとみてもいいでしょう。

なので最後のあの行動は

もはやどこにも居場所のないね…

 

文章は暗くないけど

扱われている内容は

とてつもなくハードとなっています。

 

おわりに

彼にとってはこれが一番の選択肢に思えるのは

気のせいではない気がします。

結局、影響を及ぼしたことは否定のない事実。

そして出てきたあまりに残酷な事実。

 

最後の描写もどこまでもね。

とてつもない罪を犯した人間に

容赦は、ない。