超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【モノづくりが本来あるべきところ】池井戸潤『下町ロケット ヤタガラス』

明日から平常通り。

お遊びの時間はおしまいだぜ?

 

 

 

 

池井戸潤『下町ロケット ヤタガラス』

下町ロケット ヤタガラス
池井戸潤

小学館 2018年09月28日

by ヨメレバ

 

 

 

 

復讐するもの、されるもの

この本の裏のテーマが復習かもしれませんね。

メインのテーマは「自動農業機械の技術」ですけれどもね。

それを可能にするためには相応の技術、しかも複数が

必要となってくるのです。

 

そのためにその要素がどれも完全でなくてはならず

どれか1つでもかけてしまうと

その技術は不具合を起こす悪夢の機械となり果て

会社に不利益をもたらすことになるんですよ。

 

ええ、そうなった企業がありましてね。

 

感想

読者の思うすっきりした展開をたどる

濃厚で非常に安心して読める作品です。

 

ですが、必ず主人公側の方は

一筋縄ではいかない困難に

何度も見舞われるのはお約束事項となっております(笑)

 

でもそれがなきゃあ

物語って盛り上がらないと思うのですよ。

だからスパイスとして大事大事。

 

今回はギアゴーストから実質お払い箱となってしまった

才女、島津裕の物語といってもいいかもしれません。

いや、彼女のためのこの作品よ。

最後まで彼女のだわ…

 

実は彼女は淡々と相手の側の技術面を

見据えておりまして、敵側となったダーウィンプロジェクトの

不備もしっかり見抜いていたんですよね。

 

ちゃんと彼女はすでに

ギアゴーストにいない身だけれども

かつての仲間だった伊丹に警告はいれているのです。

「そのままではだめだよ」と。

 

だけれども彼らは最初の不具合が続出していた時点で

もはやこの悪夢をつかみ取ったも同然だと思っています。

なぜならば不具合の原因を複数ケースととらずに

単一のケースとして解決しようとしたから。

 

実はその原因はね、複数の顧みられなかったほうに

あったわけなのですよ。

実は島津ちゃんが残していったデータというのは

よくよく確かめてみると不備のあるものだったの。

 

島津ちゃんがいなくなったギアゴーストは

無論そんな事情も知らなったから

それを見落としちゃったのよね。

 

しかもとどめのごとく

このトランスミッション部分は特許が申請されていたので

最後にギアゴースト含むダーウィンプロジェクトは

帝国重工の前に敗北を喫すこととなったのです。

 

でもね…お話はこれでは終わらないんだ。

やっぱりそこは佃航平の心意気が

伝わってくるのよね。

 

おわりに

なぜ彼ら+悪の権化がし食ったかといえば

方向性を全く持って見誤ったから。

悪の権化の的場についてはもう論外よ。

 

こやつに関しては全きの自業自得。

何度も彼はまだ立ち直れるチャンス、

自分を見つめなおすチャンスがあったのにかかわらず

すべてに目を背けました。

 

そして一番の悪手の

あれほどやってはいけないと言われた下請けいじめの

最たるものを行い、帝国重工のイメージに

著しく傷をつけたのです。

 

ブランドをかさに着すぎたんですよ。

それはあんたの帝国重工ではないのにね。

 

伊丹に関しては…まだ救いようはあるわね。

本当はあの展開にはもっていっては欲しくなかったけど

犠牲になるのは外れをつかまされたダーウィンの利用者だからね。

それに彼は復讐を成し遂げた後に無力感にさいなまれた…

 

だから救いようはある人間なんだよね。

そして佃によって本来の方向性を諭されたし…

 

あ、あと最後の方のある手紙は傑作です。

 

すんごいエンジニアとして

帝国重工のいけ好かないやつに

島津ちゃんの名前がでかでかと。

やったね!!

 

すっきりしたね!!

 

 

おしまい