超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【人は人なんだよ、所詮は】池井戸潤『下町ロケット ゴースト』

やっぱり普通の時がいい。

だけれども時にやる気をなくす時も。

やる気スイッチ、どこでしょうね。

 

 

 

 

下町ロケット ゴースト
池井戸潤

小学館 2018年07月20日

by ヨメレバ

 

 

 

 

その会社の人には悲しい過去があった…

もっと佃製作所も別の面に

目を向ける必要がある…

そんな時に着目したのは

トランスミッションでした。

 

それは農業機器にも

運用できるもので

佃製作所もそちらに目を向けようと

思っていたのです。

 

そこで目を付けたのは「ギアゴースト」という

会社でした。

 

その会社の社長と副社長は

ある過去を抱えていました。

 

そう、かつては彼らは帝国重工で

凄腕の社員として働いていたのです。

だけれども…

 

感想

多分初見で文字だけをみると驚くでしょうが

実はギアゴースト社の副社長である

島津は、女性だったりします。

 

文字だけをみると男性に思えるのです。

(その字が普通に読むと男性名)

 

彼女は幼い時から父親に

モノづくりの尊さを教えられた

まぎれもなきエンジニアの血を持った

凄腕のエンジニアでした。

 

だけれどもそういうものはえてして

巨大企業の人間としては扱いづらく

やがてその完璧な性格を疎ましく思われ

帝国重工の墓場の部署へと

追いやられてしまいます。

 

社長である伊丹もまたしきたりを重んじる

帝国重工では邪魔者扱いされ

彼もまた、墓場へと追いやられるのです。

 

そんな有望な技術を持つギアゴーストですが

海外の悪辣な訴訟でゼニをもうける

会社に知的財産権で訴訟を起こされるのです。

 

しかしながら、どうもこれは様子がおかしい…

それに気が付いたのはわれらが社長

佃航平だったのです。

(ちなみにそこでは成長した娘さんが出てきます)

 

これってある種最初の作品を

読んでいる感じでしたね。

 

こういうのって必ずどこかで不正のにおいがするものです。

実際にこの訴訟も実は「黒いやらかし」が

絡んでおりまして佃の気付いた論文をもとに

あることを秘かにやった結果証拠がつかめたのです。

 

そういう代物って本当にデリケートなことがあって

些細なことで訴訟問題が起きてしまう一方で

こういう悪いことに使おうとする輩がいるんですよ

まことにっ!!残念なことではありますが。

 

そしてその後ギアゴースト社はなんとか

困難から逃れることに成功します。

だけれども佃製作所に突き付けられたものは

あまりにも残酷な事実だったんですよ…

 

おわりに

この残酷な結末は直に読んでいただければ

幸いでございます。

 

だけれどもその選択肢を選んだ人を

頭ごなしには私は批判はできません。

会社をおもってやった行為をことごとく無碍にされた上に

スケープゴートにまでされ、挙句に墓場まで追いやられた…

 

そして事実はある「黒幕」がやりおおせたことだと。

それを知ったときに彼は様々な思いが巡ったことでしょう。

 

だからこそ同じような思いをしたものと

行動を共にする選択肢を取ったのだと思います。

 

だけれども、通して読んでいれば感じるでしょうが

不穏な影しかそこにはありません。

つまりあまりいい未来は見えてはこないということ。

読者側は気づくでしょう。

 

でも、彼は復讐の鬼になってしまったのです。

それすらも判断できないぐらいに。

 

 

おしまい