超雑読と趣味と

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【秘密裏の作戦、そしてその後…】福井晴敏「終戦のローレライ(下)」

悲報な状態になりました。

ま、対応はいくらでもできるので復帰を待つしかありません。

そして、COVID-19の影響はこういうところにもあるんだと

実感しました。

 

 

 

 

福井晴敏「終戦のローレライ(下)」

終戦のローレライ(下)
福井晴敏

講談社 2002年12月

by ヨメレバ

 

 

 

 

思わぬ脅威が襲い掛かる

伊507は順調に進んでいましたが

途中、とんでもない事態へと見舞われます。

どうやら「スパイ分子」が紛れていたようで

必然的にそれらに征人たちは巻き込まれることになります。

 

そして、ある「とんでもない事柄」は

防げるのか…

 

感想

本には「読ませる」作品があります。

数多くの本を読んできたと自負している(とはいってもまだまだ下っ端)ものの

そういうのに該当する作品は本当に少ないです。

 

おおむねそういう作品は読者の琴線に触れるようで

ベストセラーになりますね。

この作品も映画化されましたし。

 

上巻もパウラがあるトラウマを受ける場面が

まるで映像が出てくるかのようだと感じた部分がありました。

 

今回、この下巻、さらにそれを上回ります。

詳しいことはあまり書きすぎてしまうと

その感覚を失ってしまう恐れがありますので

なぜそう感じるのかにとどめておきたいと思います。

 

そう強く感じたのは終盤ですね。

実は下巻では伊507にとんでもないトラブルが発生します。

いわゆる「売国奴」的な連中が紛れ込み

伊507を乗っ取ろうとするのです。

 

ちなみに少しそれますが、上巻と同様

この反乱因子の人物にも「避けられない血筋」ゆえに

つらい思いをした人間がいます。

 

これは実は知っていました。

彼らは戦争中に確かにその国の人だけれども、

その流れる血ゆえに、差別的な思いをし

その結果罪を犯したがためにさらにつらい思いをするのです。

 

そしてこの戦争です、彼らの扱いは…

これはフリッツとはまた違ったつらい思いなのです。

 

さて、その部分に戻りましょう。

その部分はすべてを終えた伊507…

この間の扱いはどういう位置づけでしょうか?

そう、そもそも…なのです。

 

つまりたどってしまう結末は…なわけです。

その描写がとてつもない圧を感じるほどに

読者に文章という力で迫ってくるのです。

 

その中にはかつて征人たちが

ともに苦楽を共にした人たちが含まれます。

その中での場面は…

 

確実にその運命には光は見えては来ないのです。

そして確実に光は…

 

あまり文章にできないのがもどかしいです。

騒々しさも文章でしっかりと伝わってくるのですから…

 

その後?ですか。

ちゃんと用意されています。

そう、主人公ともう一人のその後、ね。

 

そしてもう一人(誰かはわかるね)が

最後に取る行動…

そう、その人にはある力がありましたね?

 

その後の時代にもその力は残っていました。

何を、その人は聞いたのか?

何を思ったのか。

 

それは知ることはできないでしょう。

私たちが推測するしかないのです。

 

おわりに

下巻のページ数は圧倒的です。

驚くと思います。

でも、圧倒的に読ませる魔力があるのです。

特に終盤のあの場面。

 

もう展開はわかっている。

でも夢中でかぶりついてしまう。

 

そして終章のこと。

今、もしあの人が生きていたら何を聞くのだろう…

やっぱりあの時のようなものなのかな…