超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【切ない系もまた、よい。】大森望「NOVA 7」

最近は寒さを感じるようになりました。

そろそろこたつを準備するときが来ましたかね。

 

 

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大森望「NOVA 7」

NOVA 7
大森望

河出書房新社 2012年03月 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 あれ…

途中で違和感に気づきましたよ。

あれ、楽しみにしていた方の作品がないじゃない。

まあ、実は表紙の時点で気づいてはいましたがね。

もちろんその旨はあとがきでお詫びがなされております。

 

今回の作品も割とゴリゴリのSFではない作品が見受けられます。

でもゴリゴリの作品はないわけじゃないですからね。一応。

 

感想

ゴリゴリ系の作品は私の愛する作家さんである谷甲州先生の作品です。

一時期ドはまりしましたね。ここではまだ紹介していないので

また出版年代別に読みたいなとは思っております。

 

もちろん例にもれずメカ、遠い宇宙、そしてトラブル解決という

著者の作品の王道設定なんですよね。

圧倒的困難を乗り越えていく一人の静かな男…というのが

もう王道すぎてね。ベターだ、とおもっていても

ついつい読んでしまうんですよね。

 

やっぱりこの王道設定は落ち着くものです。

 

でも、そうでないテイストの作品もいいです。

日常に土星人(?)が紛れ込む(?)「土星人襲来」面白いですし。

 

ちなみにオチありきの作品です。

なので説明に(?)が付くわけで。

本当に最後のページがすべて、といっていい作品。

土星人(?)はどうやら本国ではどうも劣等生の模様。

エリート夜嬢(!)に矛盾点を再三突っ込まれているので。

 

その中でもよかったのは切ない系のSFですね。

特に今後ありそうな作品としては

「リンナチューン」という作品があります。

いわゆるもう存在しない人間を仮想化したものが出てくる物語。

 

主人公の少年は好きだった女の子を

事故で亡くしてしまってるんですよね。

でも彼はそれをどうしても受け入れられずにその女の子の感情を持った

概念に耽溺し続けるという…

 

でもね、そんな彼を心配している女の子もいるんです。

しかもその子は少年に恋をしている。

でも彼は…

 

一見すると救いようのない作品に思えてしまうかもしれません。

でも、ちゃんと救いのある作品なのです。

残念ながら、何をしたところで彼女は概念しかなくて

もうこの世からは消え去っているのです。

なので「いない」はいつしか受け入れないといけないわけで…

 

展開は読めるでしょう。

でも、それはある種、いろいろな意味の解放だとは思うのですよ。

 

あとは最後に出てくる「サムライ・ポテト」

これはロボット系SFですね。

彼らには内なる変化が訪れるのですが…

 

これは彼らの立ち位置上、とてつもなく切ないんですよね。

結局のところ現状、人間の補助という役割に過ぎないわけで

人間側にとっては内なる変化は「歓迎せざる問題」ですからね。

 

 おわりに

 メイン作品がなかったのは残念でしたが

ここで取り上げた作品以外にも未知なる植物の物語とか

面白い作品が多くありました。

 

でも、やっぱり王道系が好きな人には向かないかも。

私もどちらかといえばそちらが好きなので

ちょっとね…