超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

スコット・トゥロー「立証責任(下)」

パンデミックというのは恐ろしいもの。

きちんと情報が伝わってこない、未知なものだからこそ

冷静に対応しないといけないんだよね。

 

 

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スコット・トゥロー「立証責任(下)」

立証責任(下)
スコット・トゥロー

文藝春秋 1995年09月 

by ヨメレバ

 

 

 

 

そんなこと、あるのかーい

ふざけた見出しにしてみました。この方がとっつきやすいのかもしれません。

翻訳作品というのは一種特有の世界があります。

その中でほぼほぼ欠けていないのは「シモ」関係のお話ですね。

こういうのを本中で目にするたびに、我が国との文化の違いというのを

まざまざと見せつけられるものです…

 

まあ、それはさておきまして…この作品は法廷ものの作品ですが

そこに絡んでいる人間関係、そしてそれがもとで起きる

様々な出来事にはどこか身につまされるものがありました。

こんなに極端ではなくても、起きないという保証はないのですから…

 

感想

まず、最初に注意喚起をしておきたいと思います。

おそらくなのですが…この作品は法廷ものだったら期待してしまう

すっきり爽快な展開、というカードは持ち合わせていないことを

お伝えしておきたいと思います。

 

それがどう感じるか…というのは人の数だけいろいろな解釈ができることでしょうから

感じ方はまあ人それぞれ、でしょう。

だけれども何とも言えないとげの刺さった感覚を覚えてしまうかもしれません。

でも、その違和感は違和感のまま、感じていいと思いますよ。

そういうのをコンセプトとしている作品だと思われますので。

 

スターンの妻の死で発見された使途不明金。

そして、スターンは妻のとんでもない秘密を知ってしまうことになります。

それはいわゆるSTD関連の疾患が明らかになったということ。

意味することは…お判りでしょう。他者の接触があったということです。

 

で、どうして愛する妻がそうなってしまったかがこの下巻で判明します。

うーん、ぼかしますけど大体上巻を読んできた読者の方ならば

もうね、明らかにおかしい人の仕業だとわかるんじゃないでしょうか。

ほらほら、もうさ明確におかしい人いるじゃない。

著者は親切だと思うんですよ、こういうところは親切ににおわせてくれるのだから。

 

裏切り者に関しても同様でございます。

これは勘の鈍すぎる私でも、まあそんなことをやる人というのは

おおむねね、という感じだったので特に読んでいて新鮮味、というのは

感じられませんでした。

 

だけれども、なぜ裏切り行為を行ったか、という理由に関しては

たといそれが決して許される行為ではないにしても

同情する部分がありましたね。

 

スターンが弁護を行っていたディクソンというのは

確かに才能のある男です、ええ、間違いなく商才はとてつもないです。

だけれども、その一方で他人に気を配るということが全くできない

男だったわけです。特に女性関係に関しては。

 

そして、どこまでも狡猾な人間だったんですよね。

思うにこいつはサイコパスだったんじゃないかなと思っております。

現実に、彼よりも上手であるスターンに対してはキレることしかできないという

無様なふるまいしかできてしませんでしたからね。

 

で、なんで裏切り者はディクソンを売ったのかといえば

いわゆるこいつの奴隷的な扱いにされたわけなのです。

もうこいつは才能の塊だから、平凡(それでもスターンの家系はエリートぞろいよ)な

人たちは普通の手段ではこの男を瓦解させることができないから。

 

で、それらの事件が解決した後のお話は…

うん、おそらく不消化気味に終わってしまうと思うのです。

まあ、おそらく著者はその不消化な展開にしたのはある種の比喩のような

感じにしたかったんじゃないかしら、とにらんでいるのですが…

 

とにもかくにも不消化というか、おそらく違和感を覚えるなと感じた人が

多い終わり方をしつつ、物語は終結を迎えます。

でも、フィクションという枠を出てしまえば、

世の中こんな感じなのかもしれませんね。

 

そういう観点で見ればなかなか面白い作品だったと思いました。

 

 おわりに

人はやっぱりフィクションには爽快なものを求めるものですね。

だけれども世の中には数多くの本があって時にそれが読者の望む

形でない終わり方をするものもよくあります。

 

それをごにょごにょいうのもまた簡単ではありますが

何か感じるものがあるのも確かです。(たまに怒りしかないものもありますが…)

 

おしまい!!