超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【その病院は…】北杜夫『楡家の人びと 第一部』

規定時間前に滑り込むと、

時間が時におしてしまう。

だけれどもいいんだ、そんなときも楽しいから。

 

 

 

 

北杜夫『楡家の人びと 第一部』

楡家の人びと 第一部
北杜夫

新潮社 2011年07月05日

by ヨメレバ

 

 

 

 

奇妙な男とその家族

なかなかに濃い面々がやってまいりました。

どうやらこの作品は実話をもとにしているようで…

にしても、あまりに濃すぎやしませんかねぇ…

 

最新設備に取りつかれた当主と

その当主の赴くままに翻弄される

家族たちと…

 

これは、そんな家族の

年代記なのです。

 

感想

第一部からもう強烈だよな。

とにかく様々な人たちが濃い出来事に見舞われるの。

 

その中で一人だけ、あまり期待されないから

ほったらかされがちな少女(登場当時)がいます。

桃子といって、上の姉たちから比べれば

どうも正直言ってオツムは足りないのです。

 

だけれども、あまり期待されなかったがゆえに

まあわがまま放題し放題が許されていて

お年頃になると浪費癖はまあまあ悪化するのです。

 

この子は自分にスポットライトが当たらないと

気が済まない子なんでしょうね。

それ故にやがて大人になり、子供を持つことになっても

その染みついた習性は抜けきることはありませんでした。

 

一方で彼女の一番上の姉である

龍子に関してはこの楡家をつとに重んじる厳格で

時に残酷性を秘めた性格を持っています。

 

一番基一郎に似ていると思うんだ。

ただし男に興味がないところが違うところ。

 

現実に基一郎の頼りにしていた欧州(これ名前ね)が

思わぬ思想に耽溺して使い物にならないから

龍子を当てにしていた節はあるのよね。

 

ン?と思ったあなた。

この時系列は関東大震災があった時系列です。

女性が何かをするなんてもってのほかだったのですぜ?

 

だからこそ奇人変人、変な養子しかいない

この楡家で精いっぱい悪役を演ずることしか

彼女はできなかったんだと思いますよ。

 

そしてその妹の聖子は…

多くは語りません。

その行動は当時、決して許される行動ではありませんでした。

 

現実彼女はその代償を背負い、

結果的に最悪の事態を迎えてしまいます。

 

確かに龍子の言う通り「忠告を聞いていれば」

なのではあります。

だけれどもこの当時、自分に正直に生きることは

この家系では許されなかったのです。

 

なので聖子のその行動は

ほめられたものではないにしろ、勇敢な行為だったことには

違いないと思うのですよ。

 

基一郎の落選、衰え、

そして震災後の災難…

ついに…

 

ここで幕を閉じるのです。

第一部時点でこの濃さだぜ…?

 

おわりに

今気づいたよ、

この方の作品超有名作品あるじゃん!!

それすらかすらない、さすが中の人クオリティ。

 

でもこれはこれですごい作品よ。

ただし感情移入は正直しづらいね(笑)

でも濃い設定は面白かったです。

 

おしまい