超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【少女は、理不尽な思いをしていた】乾石智子「双頭の蜥蜴」

もうすぐ梅雨がやってきそうに思えます。

雨があまりひどいと有酸素稼働しづらくなるので

個人的には嫌な季節でもあります。

 

 

 

 

乾石智子「双頭の蜥蜴」

双頭の蜥蜴
乾石智子

講談社 2015年08月20日

by ヨメレバ

 

 

 

 

少女の悩み…

この物語に出てくるシエラには深刻な悩みがありました。

実母との関係性です。

 

まず、決してシエラには非はないです。

絶対にないです。

悪いのは明確に母親です。

 

思うにこの母親は大人になり切れない人間だったのでしょう。

「親に従うのは当然」という誤った考えのもと

無茶な行動で家族を従わせ、シエラを孤独にさせました。

 

そんな理不尽な思いをし、

人生も楽しめなかったシエラ。

そんな彼女は一つの石に出会いました。

そこから彼女は別世界へと旅立つことになるのです。

 

感想

同じような経験をしたことのある身としては、

こういう作品は突き刺さるものがあるのです。

いえば、全身を複数本の剣で突き刺される感覚でしょうか。

 

私も、シエラのようにそう言った思いをして

自分を出すことのできない人間でした。

身近に、この母親と同じ行動をとる人間がいたのです。

 

一つの石の出会いにより彼女は<石の司>見習いかつ

<蛇紋石を磨く者>へと対峙していくことになります。

 

この蛇紋石…の人たちですが…

行ってしまえばこの世に渦巻く様々な悪を映し出したもの、

と見て差支えはないです。

 

つまり憎しみや嫉妬などが彼らの餌。

一応憎しみは主人公であるシエラだって抱くのです。

嫉妬もね。

 

実はシエラには想い人がいるのですが

その間をことごとく邪魔する(本人はその気はないんだよ)

女の子がいるのです。

 

しかもシエラと違って快活だから

「ないもの」を持っている彼女(ネリン)は

嫉妬の対象になってしまうのです。

 

そう思うとこの感情って厄介よね。

ただし、一定の「域」を超えてないんですよね。

その域を超えたときに蛇紋石…の誘惑に負けてしまうと

<潜む者>や<誘う者>に成り下がってしまうのです。

 

実は四章はこの<誘う者>が敵として出てきます。

実はシエラがとった行動から結末は見えてしまったのですけどね。

だけれども確かにその人は敵でしたが

そこに堕ちたことは確実に後悔はしていたのです。

でも、気づくのが遅すぎましたね…

 

そして最後にはその蛇紋石…の大本との戦いが待っています。

その戦いの壮絶さからも

この世にはびこる悪というのがいかに大きいかは

理解できることでしょう。

 

おわりに

この作品の最後、ついぞシエラは自分の意思で

理不尽の権化に立ち向かいます。

だけれども相手とて、一筋縄ではいかないのです。

 

そう、時には逃げの選択肢も必要なのです。

この場合はそれが正しいでしょう。

でもやがてこの毒母は身内みんなからも捨てられるでしょう。

立ち向かう以前の問題でしょうね。

 

かつての経験があるせいか

どこかチクチクする思いでしたね。

 

あと、この作品、YA向けだと感じましたね。

多分この多感な時期はそういう時期の時に読むと

より深く刺さると思うの。

(中~高校生向け)

 

おわり