超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【声をなくした少年の行き着く先】スティーヴ・ハミルトン『解錠師』

ひどい天気がマシになったので

多分あさっては行けそうではあります。

やっぱり体は動かしたいのですとも。

 

 

 

 

スティーヴ・ハミルトン『解錠師』

解錠師
スティーヴ・ハミルトン

早川書房 2012年12月

by ヨメレバ

 

 

 

 

少年は、声がなかった

その少年は、ある事件により声を失っていました。

そのために自分の思うことを声では伝えられません。

 

その代わり、彼にはすごい技術があったのです。

素晴らしい絵を描くことができること、

そして…

 

金庫の鍵を開ける能力が。

 

感想

ミステリー、というには謎解き要素はあまりありません。

該当する部分はあることはあります。

彼の犯罪生活の終盤の描写です。

あとはせいぜい「なぜ彼が声を失ったか?」ぐらいかな。

 

彼はしゃべることができなかったがために

自分の解錠能力を試した「ある事件」の時に

仲間のことは言えませんでした。

 

言えなかった、わけではありません。

心優しいマイクはおそらく仲間を売らなかったと思います。

 

やがてある種のきっかけがもとで

彼はその解錠技術を見込まれて

裏の世界へと身をやつすことになってしまいます。

 

だけれども、マイクは従うしかないのです。

しゃべることのできない彼には生きる術がそれしかないから

それと、当時の時代背景にも問題があるのです。

 

この年代は確かにマイクを助けるであろうモノはありました。

が、まだまだ出始めで今の時代のように一人に1台ペースでは

なかったのです。

 

その代わりに出てくるのがいつぞやに番組で死文化として

紹介されたものでした。

しかも色分けしたものが。

 

色別でマイクには案件の内容が

区別できる代物だったわけです。

そして最後に重要な案件を示唆する

「赤」のそいつが鳴動するのです。

 

こう思うと暗い要素があると思うでしょ?

でもね、マイクには心の支えになる

大切なパートナーがいたのです。

どんなに犯罪に身をやつしていても

彼女だけには心は開いていたのですから。

 

そして、彼女もまた

彼をこのいばらの道から救い出すものの

一人になるんですよね…

 

それと同時に、彼がなぜ声を失ったかの

答えが読者へと提示されることとなります。

 

予想のはるか上をいくほどに壮絶なものでした。

一応その場面だけは本気で読書注意です。

マイクの声を奪うだけある、それはそれは恐ろしい出来事です。

 

おわりに

結構出てくるお話はハードなのよ?

解錠を犯罪に使うきっかけもまさかの人の裏切りでもあったからね。

そう思うと関係人物のほとんどは人に恵まれてないよね。

 

暗くはない作品だけど、どこまでもやるせない作品よ。

そういうテイストじゃないからこそ、読者には刺さるんだよ。

その後は書かれていないけど、どうかマイクに幸あれ。

 

おわり