超雑読と趣味と

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【それは、負の産物であった…】福井晴敏「終戦のローレライ(上)」

なんで気温がそんなに高くないのに

こんなに暑いんだろうな…

私の体温機構、もしかしてバカ…?

 

 

 

 

福井晴敏「終戦のローレライ(上)」

終戦のローレライ(上)
福井晴敏

講談社 2002年12月

by ヨメレバ

 

 

 

 

謎の潜水艦…?

歴史のif的な作品でしょう。

ある秘密任務に参加することとなる一人の少年を軸に

秘密裏に使われることとなった潜水艦にまつわる物語です。

その潜水艦には、驚きの能力があったわけです。

 

感想

この作品はあまりに有名ですね。

映画化もされていますし。

映画は私はあまり得意ではないので見ていませんが

原作でも映像がありありと思い浮かぶ文章でした。

映像化向きといえましょう。

 

読んでいて思ったのは実は主要となる人物には

「血筋」の問題が見え隠れしてくるんですよね。

そしてそれらにつながるものはいまだに残る偏見だったりします。

 

特にそれが顕著なのは今後この物語のカギになるであろう

ある潜水艦を知る者たちでしょう。

 

実は彼らはドイツから来た人なのですが

実は違和感なく今回の特務を帯びた「伊507」に溶け込んでいます。

それは彼らの血筋がそうさせているのです。

 

ただ、兄弟の兄のほうは

冒頭よく読んでいればわかるのですが

彼が口にしてほしくない「呼び名」を読んでしまったやつを

ことごとくボコしているのです。

 

そして悲しきかな、その血筋が兄妹ともに出てしまったがゆえに

彼らはドイツ国内でもまっとうな扱いを受けることは

ありませんでした。

 

その当時、何がドイツ国内を支配していたか?

そしてそいつらはどういう方針をとったか…

それらを知っていればその扱いがどれだけひどかったかは

察するに容易なことでしょう。

 

それはその脅威である潜水艦を発見した後に出てくる

あまりにもむごい挿話からもうかがえることです。

特に兄のほうが何も希望が持てなくなってしまい、

人を信用できなくなるか…

あまりにもぞっとするほどに、きついものがありました。

 

そして本文でもなかなかに生々しい場面があります。

実はこの秘密の潜水艦を狙っていたのは

日本だけではなくて、アメリカも同様だったのです。

 

実はこいつにアメリカの艦も煮え湯を飲まされており

何とかしてものにしようとしたわけです。

そのために執拗に「伊507」に攻撃をかけて

艦に損害まで与えてくるわけですので。

 

その際に伊507はかなりの損害を被り

艦内に有毒ガスが出てしまいます。

尽力の甲斐あって何とか以上は直ったものの…

 

これもきつい描写でした。

本当、著者はこちらをえぐり取る描写が

巧みだと思いましたよ…

 

それは彼の友人でたくましい体を持つ

清永が目撃することとなりますが…

 

おわり

著者は自身を「アニメ作家」と言っておられます。

確かにその情景がありありと思い浮かぶような

文章表現でしたね。

 

映像が出てくる作品は結構稀ですが

この方のはある悲しい場面がありありと思い浮かぶ有様でした。

 

他にもガンダムの作品にもかかわっているようで。

機会があったら、読みたいものですわ。