超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【少女が巻き込まれる、果てなき戦い】冲方丁「マルドゥック・スクランブル(改訂新版)」

明日はおそらく天候不良で動けません!!

ああ、悲しきかな。

そんな時でも私は淡々とことはこなします。

 

 

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冲方丁「マルドゥック・スクランブル(改訂新版)」

マルドゥック・スクランブル(改訂新版)
冲方丁

早川書房 2010年09月

by ヨメレバ

 

 

少女は瀕死から、よみがえった…

その少女は春をひさぐ少女でした。

太客の専属になった彼女は

ある事件に巻き込まれ、あわや命を落とす重傷をおいました。

 

その太客は快楽殺人犯だったのです。

しかも意図的に過去の殺した人間の記憶を

自らから消し去っていました。

 

その男を追うため、

彼女を救った事件の追求のメンバーたちと

男を追うのですが…

 

感想

こういう作品、読んでいていいよね…

サイバーパンク、未知の力とつながる感覚。

何だろうね、こういう本を読むとエネルギーをもらえます。

作者の作品のパワーをひしひしと浴びた感じ。

 

主人公のバロットは心に傷を負った少女です。

なぜかは中盤に出てきますが

それは少女にとってはあまりにも残酷で

思い出したくもないことでした。

 

実はそれの性別を替えたバージョンが

今回バロットに傷を負わせた張本人、シエルにも

言えることなのです。

 

もっとも彼の場合は、バロットのようには生きられず

そのまんま破滅への道をたどり

ついぞ追われる側に回ってしまいました。

 

そして、最後までバロットを付け狙い

バロットを救った組織にまで敵意をむき出しにする男、

ボイルドにもこれまた悲しい傷がありました。

 

実は彼はバロットの相棒となるウフコックのかつての相棒でした。

ところが彼は彼の決定的な傷により

ウフコックに残虐な行為をさせることとなってしまったのです。

 

そして彼は、結局救ってくれた組織を抜け出し

ウフコックやバロットに立ちはだかるようになったのです。

 

この作品の醍醐味はシエルを追いつめるために

カジノで一儲けをする場面です。

結構ここは長いウェイトを使っており、

勝つか負けるかの手に汗握る描写が魅力です。

 

最後に出てくるディーラーが本当に強敵です。

もちろん、有利な立場になるために

彼はいかさまを巧みに利用しますし

場を掌握する力を持ち合わせ

挙句、バロットたちが使っている力を看過します。

 

だけれどもバロットは途中、成長の過程を迎え

それを乗り越えていくんですよね。

(彼女は元々力を持っているわけで)

 

最後は金をかっさらった一行と

かつてウフコックの相棒だったボイルドとの

直接対決となります。

 

元々このボイルドはウフコックの相棒だっただけ

戦闘能力はとてつもないんですよ。

なのでバロックも彼の戦術に取り込まれ、

命の危機を何度も迎えるわけで。

 

そして、戦いはついに…

まあ結末は各自で。

この分厚い牙城を突き崩したあなたに

それを楽しむ権利はあるので。

 

おわりに

この作品は、読んでいて泣きそうになりましたね。

そう、間違いなく敵であったボイルドも

ウフコックのことを好いていて、信頼していたのです。

 

だけれども彼はウフコックを兵器として使い

彼の意図せず殺戮兵器にしてしまった。

それが決定的でたもとを分かつことに…

 

しかもウフコックはこれでも優しいねずみなんだよな。

その汚れ役、最後に引き受けるの。

こんな別れ方をしても仲間だったんだぜ?

悲しすぎるさ。

 

なお、ご存じの通りで前日譚もあります。

この二人が相棒だった時のお話が。

 

それももちろん読みますからね。

 

おわり