超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【この世の中は、不条理ばかり…】藤原緋沙子「月凍てる」

今日はさすがに暑かったですわ。

だけれども、感染対策はしっかりと、なのです。

 

 

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藤原緋沙子「月凍てる」

月凍てる
藤原 緋沙子

新潮社 2012年10月

by ヨメレバ

 

 

 

 

 そこに残るのは…

なかなかの切ない作品集でした。

ほとんどの作品に希望はないのです。

ただし、2番目に出てくる作品は、確かに救われないといえばそうですが

幸いにも希望は少し見いだせるわけですし。

 

なのでこの作品にはあまり爽快感を求めないでくださいね。

特に気分が沈んでいる時に読むと

あまりよろしくないことになる恐れもありますから…

 

感想

最初の作品から「うわ…」と感じるものがありました。

なぜならばもう完膚なきまで登場する男が

破綻してしまうからなのです。

 

確かに、そうなるまでのいきさつを考えれば

気持ちをある程度は理解できなくもないのですが

(婿という立場上、彼は強く出ることができません。

そして義母のあたりが強いのもあり、才もない彼はどうにも

できないわけで…)

 

だけれども彼はその結果、越えてはいけない一線を越えてしまうのです。

そういうことをしてかつて思った女性を救おうとしたところで

決してそれが報われない、というのは想像に難くないでしょう。

無論それ見たことか、な結末が待ち受けております。

 

それでも彼はなお、あがき続けるのです。

たといもう本望を遂げられる状態でなかろうとも。

何だろうね、人は狂うととことん…

 

少しだけ救いのある作品は2作品目です。

結婚を父から反対された娘は

それに耐えきれず、男とともに駆け落ちしていきます。

やがて結ばれ、彼らの間には子供ができるのですが…

それも束の間、男がかつて見舞われた悲劇をほじくり返すような

出来事が起きてしまうのです。

 

その結果は男は結果的に罪を犯してしまうことになります。

ただし彼に関してはかつて殺した男に騙されて大金を失ったのです。

なのでかなりやむを得ない事情が強いものでした。

 

それと救いなのは確かに彼は妻を残して江戸を去らねばならなくなりましたが

5年という期限付きのもの。

5年すればまた戻ることはできるのです。

 

そして何とか男は添い遂げるのを反対した女の父親と

和解ができたのですから。

それは例外のケースです。

 

表題作は…切ないですね。

強大には共通の敵がいたのですが

そのために数多くの人が狂わされていったこと。

そして、その身分がゆえに想っていても、添い遂げられないという悲しみ。

 

一番これが心苦しかったですね。

 

 おわりに

爽快な作品も好きだけど、どこか切なく

人の無力さを感じる作品もまた、いいものですね。

世の中にはこんなことがたくさんあるわけですしね。