超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

【おそらく主人公の姿は…】野坂昭如「行き暮れて雪」

めっきり冷え込みが強くなってきました。

こたつは…入れていないんですよね。

なぜならばつける時間もあまりないですし。

 

 

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行き暮れて雪
野坂昭如

中央公論新社 1984年03月 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 退廃的

どこかそんな雰囲気の漂う作品となっています。

一応、この作品は登場人物の名前は変わっていますが

実のところ、著者の実話の様な気がするんですよね。

なぜならば、著者の出自が合致するんですよ。

調べればわかりますが、かなり複雑な環境で育っています。

 

感想

主人公は、いわゆる心に闇を抱える青年です。

それはなぜかといえば、前述の通りで「複雑な家族環境」にあります。

ちなみに彼の生母は産後の肥え立ちが悪く、亡くなっています。

昔の、栄養状態がよくなかった時代の悲劇と言えましょう。

 

そして彼は養子に出されて、また戻ったりと

結構たらいまわしにされているんですよ。

まあ、彼の手癖の悪さと見栄っ張りな性格に起因するものだと思います。

 

まあこれを完全に擁護するつもりはさらさらありませんが

「地に足が付けない」ということがどれほど苦しいことか。

大体の人が当たり前のようにあるものが「存在しない」

 

ン?でもこの本の主人公はは、環境的には超恵まれてるんでねの?

と思うことでしょう。うん、確かにそうです。

ものには確実に恵まれています。そして何もかもが許されるのです。

たとい主人公がこっそりいろいろなものをくすねたとしても。

 

しかもその出自の複雑さがゆえに誰も何も言わないんですよね。

一種の憐れみを持ってね。

でもね、これって本当に「いいことじゃない」んだよね。

そのために主人公の悠二はその虚勢を使わな変えれば何もできない

いわゆる「クズ」になってしまったわけですよ。

 

そうはならない、と思いたいでしょ?

でもこのご時世ですでになっている人なんて、おそらく見えないだけで

彼のように、目的をもはや見いだせなくなっていたりする人は

数多くいるように思えるのです。

 

しかももっと質の悪いことに、行動がこの時代とは違い

制限されているわけでして…

何とかしてこの状態が緩和していただきたいものですが

何せ住んでいるところでも感染者数は減ってはいなくて…

悲しいものですね。

 

こう書くと、この本はどこまでも救いようのないものに

感じるかもしれませんが、

どうやら彼には何か思うことがあった模様で

一時的にではあるものの、彼は寺でつかの間の生活を

送ることとなります。

 

しかも剃髪までするという心の入れよう。

途中で逃げ出すことなく、一応のお務めは終えています。

 

 おわりに

 おそらく著者の生きてきた人生に基づく実話なのでしょう。

どこにも身の置き所がないという環境は

彼の心をただただ荒ませました。

どうせ…という心が強かったのでしょう。

 

でも彼は、有名な作品を書き残しているんですよね。

本当に、どう転ぶかはわからないものですね。