雨ばかりが続くものですね。
ちょっと有酸素ができないの、いや。
バッタを倒しにアフリカへ 光文社 2017年05月17日
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ある研究者の途方もないフィールドワーク
研究という分野には様々なものがあります。
実験室で完結する研究もあれば、著者のように実際に該当する場所に赴き
その現象を調査するものも。
この本は昆虫に魅入られた一人の男が著者となります。
なんか名前にン?と思われるかもしれませんが、このミドルネーム部分には
ちゃんとそれを名乗る由来があるんですよ。
さて、感想ね。
まず、この本は新書には大変珍しく300ページを超えてくるものとなっています。
300超えは私も数冊しか読んでいないからね。
そう思うと冗長でつまらないんだろ?とお思いでしょう。
ちょっと待ってください、この本の表紙をご覧になりましたか?
とてつもなくインパクトのある、おいこれなんだよという表紙でしょう?
そう、中の人(表紙の人)はそういうお方なのです(?)
なので安心して読んでいただければ。
中身はバッタが引き起こす蝗害(こうがい)というものを研究しに
異国の地、モーリタニアに赴くのですが…
もうさっそく行く前からえらい目に遭うのです。
冒頭の洗礼からしても、日本が比較的平和だということは
うかがい知ることができるでしょう。
もうね、アフリカの「賄賂」系統は本当に多いんですよね。
知らないとえらい目を見る場合もあるわけで。
ただし著者がお世話になる研究所の所長に関しては
そういうのを本当に良しと思わない人ですし、
蝗害の研究のためにいつだって準備をしているすごい人なのです。
おそらくこの所長、どこに行っても慕われるような人よ。
この本で惹かれる部分というのはバッタの生体の部分もそうですが
モーリタニアの文化というところでしょうか。
特に女性感というか…
ただし、男性に好かれるためという観点だけで無理強いは
本当に行けないことなんだと思うのです。
モーリタニアの場合は無理に太らせるための悪しき習慣があるのです。
日本のやせ至上主義と一緒ですよね。
いまだにボディシェイミングがなくならないのはこういうのがあるからでしょう。
「あるべき姿でいる」が受容される世界になればいいのにね。
基本的にメインの蝗害に関しては割と終盤に出てくるので
それらを読みたい人は該当部分までは少し早いペースで読んだ方がいいかもです。
本当に後半なんですわ。
でも、そうするにはもったいなくはあるんですよ。
そこには、日本における研究者の扱いの問題がありますので。
実は先日、元そう言ったところに従事をした方のお話を聞きましたが
待遇はお世辞にいいとは言えませんよ。
その人はエリートもエリートなのですがそれですら待遇はあれでしたからね。
その人の場合はその分野が必要とされるものだからまだいいのですが
著者の場合はさらに深刻です。恩恵を受けられる環境があまりになさすぎるので。
(まあ前者の場合も、それにあぐらをかいちゃう環境になるからね)
アフリカの所長さんからも「それはあんまりすぎるよ」という言葉が出る自体
深刻な問題だと思いますよ。
一見して有用でないように見えても、そこに何かが隠されている可能性もあります。
何よりそれらを研究したい人たちの希望にもつながるんですよね。
希望を見出せない研究分野には、国の未来もないと思いますよ。
探求心の芽を摘むようではね。
おわりに
この感想では著者を支える仲間たちに関してはふれませんでしたが
まあ彼らも本当に面白い人たちですよ。
砂漠のドライビング・テクニックとかその国の結婚観とか…
今更感は強いですが読めてよかったなと思います。