超雑読と趣味と

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【救われない心というのは、突き刺さる】近藤史恵「二人道成寺」

2日連続で雨というものに有酸素兼日々の用足し消化の際に

見舞われてしまいました。

この時期の天気は読めないものですな。

 

 

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近藤史恵「二人道成寺」

二人道成寺
近藤史恵

文藝春秋 2004年03月30日 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 お初、と思っていたら…?

実は著者の本は初めて、だと思っていました。

ところがどっこい、かつていた場所ですでに紹介済みだったーよ。

一応有名作品を読んでいました。

 

作品はとてもよかったんだけれどもいわゆる「アレな」女性がもう目について

それがすごく触ってうわーと思った作品でした。

確か感想でもその人物だけは酷評した記憶が。

 

ン?今回はどうなっているかって、それではご覧ください。

 

感想(一応ネタバレ注意)

真相の詳細は明かさないけどそれに触れるかも。ご注意あれ。

 

この作品は静かな文章とは対照的に、読み終えたときの

とてつもない疲労感は強烈なものになりました。

決して作品が悪かった、というわけではないのです。

むしろ心理描写なんかそりゃあすごいな、と思わせるぐらいに。

 

物語は歌舞伎俳優である瀬川小菊の元に、

中村芙蓉の妻に関しての調査をしてほしいという依頼が入るのです。

小菊には探偵との縁があってそれを知っていてのこと。

 

その妻の美咲ですが…

彼女は良家のお嬢さん。

ただしそれが必ずしもプラスにはなっておらず、世間を知らないということから

人間関係を築くことがうまくなくて、遠巻きにされたようで。

 

まあ、この彼女の特性というのがある種の真相の鍵にも

なっているんですよね。

 

そして、だんだんと物語が進んでいくにつれ

中村芙蓉のライバルと目されてきた中村国蔵との関係性も

明らかになってきます。

 

この国蔵に関しては実は美咲とも何かしらの疑惑が

出てきてはいるんですよ。

だけれども結局のところは…

 

国蔵のことに関してはこれは歌舞伎の世界のどうにもしようのない

現状を示唆しているんですよね。

いや、その現状に関しては実を言うとある種の形で変えることはできるのです。

でもそれが可能なのは一握り…いくら実力のある国蔵でもそれがかなわないとなると…

 

そして、彼女の真相を知る数少ない女友達が

最後に出てきて真相が提示されますが…

これね、その前に出てくる事実からしても救えないんだよね。

 

そしてその彼女がいわゆる「起きるかはわからない」現状に

身を置いている今、たとえ周辺人物の真相がわかって

彼女に対して気遣いの姿勢を見せたとしても…

その真相が「なかったことにはなりえない」

 

救えない作品でしたよ。

切ねぇな、切ねぇなぁ…

 

 おわりに

決してこの作品、長いわけではないです。

どうやら近いうちにこれよりも圧倒的物量で、

その圧倒的物量も読ませてしまう大物が出てくる予定ですが

そのパンチ力と同等のものがありました。

 

終了後の読者インタビューでも長い作品はあまり…と言っていたので

それゆえのこのパンチ力でしょう。

でも救われん…

 

 終