超雑読と趣味と

乱数の女神の子らしく、誇らしくありなさい。

倉橋燿子「パセリ伝説 memory9」

指の爪を取ろうとしたら、はがしすぎました。

無論大惨事になったのは言うまでもありません。

 

 

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倉橋燿子「パセリ伝説 memory9」

パセリ伝説 memory9
倉橋 燿子

講談社 2009年03月14日 

by ヨメレバ

 

 

 

 

 大人でも楽しめる児童書

この物語も終盤を迎えてまいりました。はじめこそ何にもわからず暗中模索

向こう見ずな性格がゆえにトラブルばかり起こしてきたパセリですが

だんだんと彼女も自らが抱えてきた使命を自覚してきており

そこにはまっすぐな心と強ささえもうかがえるようになってきました。

 

この巻ですが終盤に関しては必読ですし、ついに待望の展開を迎える

非常事態に陥ってしまっていたレンゲを救い出すシーンは

ジーンとくるのではないでしょうか。

 

感想と行きましょう。

力強さを感じる作品で、心が打たれるものがありましたね。

まだ大人と子供の境目とでもいえるような少女が、とてつもない使命を抱えて

それを支えてくれる仲間とともに奮闘する…そしてその状況は全く油断できないほど

逼迫しているんですよね。

 

もしもパセリが世界を救う使命をあきらめてしまえば悪はたやすく世界を包み込んで

しまうことでしょう。なぜならば、悪というのは楽なものでして堕ちるのなんて本当に

あっという間なものですからね。

 

現にフラム国はあまりにも十分すぎるほどのテクノロジーを持っているにかかわらず

それに飽き足らずにほかの国を侵略し始めているのです。

つまりこのフラム国は欲に取りつかれ切ってしまった悪なのですよ。

それを止めるパセリたちのような人が全くいなくなってしまえば

悪ははびこってしまいます。

 

フラム国側も今回は考えましたね。パセリの一番の弱みを利用して

とことんまでパセリを痛めつけようとしました。

だけれども今回パセリはパセリを支え続けている仲間がたくさんいます。

ちょっと癖ありの動物たちや、毒舌(!)のマリモもいますからね。

 

そして…一人お忘れかと思いますがふとしたことでフラム国に悪しきように利用

されてしまったパセリの最大の友のレンゲ。

彼女はきっと心の闇を突かれたのだと思います。とことんまで卑怯だなフラム国。

彼女には彼女が自覚していたのですが何のとりえもないということ。

それが彼女を闇に落としてしまったのでしょう。

 

だけれども、取り柄がないということを自覚できるだけでもすごいことなんですよ。

自分の弱さを自覚できるということ。世の大人はそれを自覚できずに

暴言でごまかしたりして強く見せようとしますからね。

 

それに、彼女には人を信じるという優しさがあります。

まあこれはアシュレー君には怒られそうですね。信じきりもいけないってね。

でもまずは信じてみることは大事ですもの。

 

パセリはその弱さすら認めてあげるのです。それが「悪いことでない」と

自覚できた時、彼女は悪夢から目覚めたんですよね。

取り柄がなくたっていいのだよ。自分と向き合えているだけ、強いから。

 

そして、終盤のミモザとの直接対話。

これは全部話しちゃうと面白くなくなりますから、あまりは言わないでおきましょう。

ですが、これは上に立つ者、そして権限を使える人ならば大事なこと。

それがよこしまなことが根底にあるとその力はやがて巡り巡って

自らを滅ぼすことになること。

 

ミモザはまだそれを自覚できてはいないようです。嫉妬に狂っていますしね。

本当はパセリだって嫉妬は抱いたはずですよ。レンゲの時に操られた時に

突きつけられた現状を見てね。

 

でもパセリはその衝動がミモザの弱さだと気付きました。

それゆえに決定的な発言をしたんですよね。

ここでの会話は本当、日常でも役に立つものなので

読んでおいて損はないでしょう。

 

 おわりに

この巻は今までの何とも言えないもどかしさを一気に解放してくれるような

素晴らしい巻となりました。その反面、不安要素はあるので

まだまだ油断はできないのですが…

 

あと3巻となりました。

心の強さを手に入れたパセリの活躍が楽しみです。

 

 おしまい。