寒い日が続きます。手がかじかむのっていやですよね。
それと乾燥。結構食器洗いを頻繁にやるので
死活問題なんですよ…
天外消失 早川書房 2008年12月
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ミステリーはやっぱりいいぞ。
ミステリーというジャンルは一時期、食い入るように読んだものです。
有名どころが出している作品を隅から隅まで徹底的にね。
でも、それは過去の栄光でもう何年も前のお話です。
せっかく新天地に来たいい機会ですのでもしも、そのような機会がありましたら
またこちらでも独断と偏見に大変満ち満ちた感想でも書きたいと思っております。
じゃあ、本編の感想でも行こか。
まず、この本がすごいな!!と思わせてくれたのが最初にドーンと
娯楽小説の大家といえるバローズ氏を出してきたところです。
バローズといえばターザンが有名(ただし私は未読)ですがそのターザンが出てくる
ミステリー作品が最初を飾ってくれます。
ターザンの仲間である動物の妻が彼をよく思っていないライバルに妻ごと
さらわれていってしまったがためにその夫とともにターザンは妻を探しに行くのです。
やっぱり作り方はバローズらしいな、と思います。
困難に次ぐ困難。そしてようやく敵が正体を現してきたと思ったら
絶体絶命の事態が彼らの目の前に。
でもね、著者のシリーズを読んでいるあなたならば、どのような展開をたどるかは
よーくわかっていますよね!!そう、娯楽小説ですので!!
この安心感がある、というのが彼の作品の強みなんですよね。
ワンパターンといわれがちなんですが、それでも読んでしまうという魅力ね。
そうそう、この作品はもっと素晴らしい作品というのが
出てきております。それが何かといいますと「完全犯罪もの」です。
そう、正義の側がその手をつかめなかった「悔しいのぉ(笑)」な作品ですよ。
その作品の中に、かつて交際していた女性が押し掛けてきたのをうっざいからという
(嘘じゃないよ本当にこんな感じの理由)理由にて絞殺し、死体を消した
完全犯罪というのがあるのです。
ただし、手法に関してはとてつもなくグロテスク極まりない代物です。
確かに国内でもあわや完全犯罪(薬剤使用)というのがありましたが
あの事件の場合はその人が体内に入れていたものが希少物だったがゆえに
足が付きましたね。
今回の場合は確かに犯人の部屋には被害者のものはありましたが
肝心かなめの死体が見つからないのですから。
間違いなく食事中には読んではいけない代物です。
よくよく読んでみたらすごくえげつないことをしているんですもの。
しかも死体を消し去るためにそれはそれは想像しただけで
おぞましいことをやってのけています。
ただ、なんというか加害者側は悪いとは言い切れないんですよね。
ほかの完全犯罪ものと同様にね。
もう1つのその作品なんですが、
このケースとは違って加害者は生存していません。
先ほど記述した完全犯罪はえげつないものでしたが
この作品の場合はなんというか…切ないわね、というのが率直な感想。
なにせことを行った男はその親に再三にわたって苦しめられていたわけで。
つまり、この親はいわゆるサイコパスだったのでしょうね。
それかトンデモクラスの毒親。なので息子は何とかして逃れるために
死を選んだのですがどれもこのサイコパスには効力はなかったようなので。
そんな苦しくなった男は何とかしてこのサイコパスを消し去り、
自分も消し去るために完全犯罪をなしえるわけなのです。
これもいわゆる何も残らない系の完全犯罪。
ただ、本当にこういうのは自分の経験もあるからなのかもしれませんが
どこか身につまされる感じを受けてしまうのですよ。
最後に、表題作も触れておきましょうか。
この作品はミステリーの読者を「欺く」手法をフルに使っている作品です。
つまり「文字に書いてある事柄」をうのみにしてはいけないという
ことを最大限に生かした作品です。
「~してはいけない」という名目の影で犯罪が行われた。
という例が完全に信用できないのがこの作品なんですよね。
それと、そこで「そう見えた」という視点が明らかに近い距離でない限りは
信頼が完全にできないといったことを思い知らされる作品でもあります。
やっていることは本当にシンプルで「ああ、そうすれば犯罪は可能になるね」と
いったものなのです。
そう見えたものが「そうじゃない」、抜け道を使っているのですから。
そして一見して正義の面をしている人が、そうじゃないことも。
犯人は身近にいる、ということも痛感させられる、そんな作品でした。
終わりに!!
有名どころから、そうでない、数作品しか残さなかった方まで…
幅広い範囲を扱ったなかなかユニークなミステリーでした。
ここで感想文を書かなかった作品にも「読者の裁量次第」といった作品があり
これもまた人によっていろいろな解釈ができそうで興味深かったですね。
またぼちぼち、ミステリーも扱っていけたら、と思っております。